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『ソドムの市』この映画を見て!

第73回『ソドムの市』
Sodomu 今回紹介する映画は私が今まで見てきた何百本という映画の中で一番衝撃を受けた作品です。マルキ・ド・サドの『ソドム百二十日』を原作に舞台を第二次大戦下に置き換えて映画化されたのですが、その過激な映像とストーリーは今見てもかなりのインパクトがあります。この映画は見る人をとても選びます。小中学生や倫理観や道徳観の強い人は決して見ないほうがいいですし、残酷な描写が苦手な人も見ないほうがいいかもしれません。
 ストーリー:「第2次世界大戦末期、ナチ占領下の北イタリア。ファシストで権力者の公爵・司教・大統領・判事の4人は、自分たちの快楽のために“完璧”な少年少女を街から強制的に集めてくる。秘密の館に連行された美少年・美少女は4人の権力者によって、想像を絶する地獄を体験する。地獄の門・変態地獄・糞尿地獄・血の地獄の4部構成からなる映画史に名を残す問題作。」
 この映画は全編ショッキングで異様なシーンの連続です。レイプ・スカトロ・ソドミー・SM・拷問・虐殺と反倫理的・反道徳的なシーンが次から次へと出てきます。結末も救いようがなく、絶望的です。ここまで観客に後ろめたさと嫌悪感を感じる作品はそうありません。それでいながら、この映画は見ている途中映像から目が全く離せないほど力を持っている作品でもあります。
 この映画は人間の醜さや愚かさ、残酷さを徹底して描きます。この映画を見ると、権力を握った人間たちの傲慢さや愚かさ、力を奪われた人間たちの無力さというものをとても痛感します。この映画はとても過激なシーンの連続でショックを受けますが、よくよく考えると現実の世界では、この映画で描かれている強姦や虐殺・拷問は世界のどこかでいまっも日常的に起こっています。権力に従順になってしまう人間も数多くいます。ただ多くの人はそのような現実をあえて直視しようとはしません。この映画は私たちが見ようとしないこの世界の闇をデフォルメした形で観客に突きつけてくる作品です。
 またこの映画は過激な内容に反して、政治的メッセージが強い作品です。監督のパゾリーニは共産主義者だということもあり、権力に屈した人間たちの悲劇や反権力、反体制といったメッセージがあちこちにこめられた作品でもあります。
 さらに、この映画は人間に対する諦観が感じられます。力を持つと欲望の赴くままに行動する人間という存在。人間が欲望をセーブするために生み出した宗教や道徳・倫理といったものが如何に恣意的で脆弱なものか・・・。この映画は人間という生き物の闇の部分を徹底的に追求した映画です。この映画を見ると、しょせん人間なんてこの世界で大した存在ではないということを認識できると思います。
 この映画はとても残酷な映画ですが、映像・音楽共にとても美しく、芸術的に見るべきところが多い作品でもあります。シンメトリーな構図を多用した映像は人工的な雰囲気が感じられ、人間によって完全に管理された空間での出来事であることを見事に表現しています。モリコーネの音楽もとても美しく、逆に映画のもつ異様な雰囲気を引き立てます。
 またストーリーの割りに映画に流れは淡々としており、役者のオーバーな演技が逆に見る者を冷めさせ、客観的な立場で見られる作品となっています。
 ちなみに監督のパゾリーニはこの映画の公開直後に、映画に出演した少年に悪戯をしようとして顔面を殴られ殺されてしまいました。この映画はさまざまなメッセージ性やテーマがこめられていますが、それは建前に過ぎず、ある意味、パゾリーニの性に対する抑圧された変態願望が表現されただけの映画かもしれません。
 この映画は一度見ると二度と見たくないと思う作品かもしれませんが、一度は見て損はない作品だと思います。決して単なるエログロのB級作品ではありません。ただお食事中には絶対に見てはいけませんよ。

製作年度 1975年
製作国・地域 イタリア
上映時間 118分
監督 ピエル・パオロ・パゾリーニ 
原作 マルキ・ド・サド 
脚本 ピエル・パオロ・パゾリーニ 、セルジオ・チッティ 
音楽 エンニオ・モリコーネ 
出演 パオロ・ボナチェッリ 、ジョルジオ・カタルディ 、カテリーナ・ボラット 、アルド・ヴァレッティ 、ウンベルト・P・クィナヴァル 

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コメント

コメントありがとうございます。私がこの映画の存在を知ったのは高校の時でしたが、見るのにとても躊躇した映画で、大学入ってからレンタルビデオで見ました。最初見た時はショッキングな映像の連続に私も驚きました。人間の持つ底知れぬ闇と狂気を見たような気がしました。

投稿: アシタカ | 2006年6月25日 (日) 20時01分

カゴメは以前、これをずっと探してて、
新宿のあるレンタルビデオ屋さんにあるのを発見して観たのですが、
いやはや本当に驚きました。
正直言うと、この作品は傑作だからこそ門外不出にすべきであろう、
とまで思うです。
描いてはいけない領域にまで達してしまった。
パゾリーニ程度の手腕があれば他の映像作家でも、
やろうと思えば出来ると思いますが、
でも、敢えて誰もやらなかったのは、
「やっちゃあいかんだろ。やっぱり」
という自己規制が働いてたから。
パゾリーニはそれを踏み越えちゃった、禁断の一線を。
まぁ、非業の死を遂げても仕方なかったかも…。

投稿: カゴメ | 2006年6月25日 (日) 16時10分

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» パゾリーニの「ソドムの市」 [【 X-CAFE 】]
マルキ・ド・サドの『ソドムの百二十日』を、イタリア映画界の奇才パゾリーニが映画化。ホモセクシャル、スカトロ、拷問描写がセンセーションを巻き起こし、本国イタリアはじめ各国で部分削除、上映禁止になる。 全精力を傾けてこの作品を作ったパゾリーニ監督は、映画が完成してまもなくローマ近郊の海岸で激しく損傷した遺体となって発見される。 同性愛者だったパゾリーニから個人的な性的行為を要求された「ソドムの市」出演の少年が、逆上して木材で殴ったうえに自動車で轢いて殺害したとされていた。 それから30年経って、服... [続きを読む]

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