上原隆の本 街を捨て書を読もう!
『友がみな我よりえらく見える日は』
『喜びは悲しみのあとに』
『雨にぬれても』
・三冊とも幻冬舎アウトロー文庫より発行
私は中島みゆきが昔から好きなのですが、今回紹介する上原隆の本を読むと、中島みゆきの大ヒットした歌『地上の星』がいつも頭に流れてきます。『地上の星』は中島みゆきの名もなき人たちへの温かいエールや共感が歌詞に込められていましたが、上原隆の本にも同じような思いが込められています。
上原隆は「ルポルタージュ・コラム」と名付けるノンフィクションの作品を発表し続けています。彼は名もなき人たちのさまざまな生き様を、時に淡々と、時 にユーモラスに描いていきます。さまざまな職業に従事する人、会社をリストラされた人、夫や妻と離婚した人、父子家庭や母子家庭の親子、登校拒否やうつ病になった人、仕事で悩む人々・・・。彼の作品に出てくる人は、どこにでもいそうな人たちであり、出てくる話もどこにでもありそうな話しです。そんなどこにでもいそうな人の話にも関わらず、読者は読んでいる間、彼らの生き様に引き込まれ、深く共感させられます。それは作者のルポの仕方や文章の力がとても大きいです。彼は相手と常に一定の距離を保ちながら接し、ありのまま の相手の姿を彼の言葉でつむいでいきます。ありのままをありのままに自分の言葉で描くということは簡単なようでいて、とても難しいと思います。作者が淡々と描いているからこそ、読者は描かれている人たちの生き方に自分を重ね合わせたり、思いを寄せることが出来るのでしょう。
それにしても彼の作品に出てくる人の生き方を読んでいると、普通の人生なんてなくて、みんなそれぞれ時に迷い、時に格闘し、時に涙しながらドラマチックに生きているのだなという当たり前のことを思い出させてくれます。また彼の文章を読むと、生きることに良いも悪いも正解はないということに気づき、生きることに対して肩の力がふっと抜けます。
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