『べてるの家の「非」援助論―そのままでいいと思えるための25章』街を捨て書を読もう!
『べてるの家の「非」援助論―そのままでいいと思えるための25章』
日本ではまだまだ精神障害を持つ人に対して偏見や差別が根強く、彼らを異質な者、危険な者としてみなしてしまう風潮があり、精神障害を持つ人は大変生きづらい状況に置かれています。
そんな中、北海道・浦河町にある浦河べてるの家では、精神障害をもつ人たちが地域の一員としていきいきとした生活を送っています。べてるの家は精神障害を持っている人が共同で生活をしたり、昆布の販売を行ったり、自分の病の研究をしたりしています。べてるの家の特徴は、精神障害を病気捉えて治療し、社会復帰をめざすのではなく、精神障害をもっている人の悩みや弱さをそのまま受けいれ、問題だらけの人生を肯定する援助を行っているところです。今回紹介する本はそんな「べてるの家」の非援助論を当事者たちや関係者が熱く語った本です。この本は福祉関係者の人はもちろんのこと、現代社会で生きにくさを感じている人にぜひ読んで欲しい本です。「成功」や「効率」「合理化」という右肩上がりを目指す社会の中で「失敗」「非効率」「不合理」な右肩下がりの生き方を大切にしようとするべてるの家。そんなべてるの家の考えは現代社会の問題点を見事に浮かび上がらせます。べてるの家では生きる苦労・失敗や弱い自分の尊重、仲間同士の語り合いをとても大切にします。そして精神障害者がもつネガティブなものをポジティブなものへと転換させ、心の病があっても充実した生き方ができることを提示します。
私はこの本を読んでとても衝撃を受けると同時に、能力主義がはびこるこの社会で生きるのがとても楽になりました。今まで自分の中ではびこっていた価値観に大きくヒビが入り、今までにない風が吹き込んできました。そして一人一人の人が抱える弱さや苦労そのものを尊重し、見守っているべてるの人たちの姿に、これからの自分の援助の姿勢を問われたような気がしました。
ぜひ、みなさまも読んでみてください!
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