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夜会VOL.10『海嘯』

夜会VOL.10『海嘯』

Yakai_10  今年は中島みゆきのライフワークである夜会の14回目『24時発00時発』が東京と大阪で公演されています。私も東京での公演を見てきたのですが、とても素晴らしい作品でした。
 夜会はどの作品もとても完成度が高く、お奨めなのですが、今回は桜が満開のこの時期にぴったりの夜会『海嘯』を紹介します。
 この作品は1998年に渋谷シアターコクーンで公演されました。10作目ということもあり、ひとつの区切りとなる集大成の作品として制作されました。この作品まで夜会は毎年冬にシアターコクーンで定期的に公演されていましたが、この作品後は不定期で公演場所を変えながら制作されることになりました。
 ストーリー:「ハワイで有名な日本料理レストラン「みなかみ」。店のオーナー水上繭は養父から店を引き継ぎ、事業を拡大させて成功を収めていた。しかし、水上繭は店のことより復讐のことで頭がいっぱいだった。繭は水上家に小さいときに養女として迎え入れられたが、実の両親がなぜ自分を手放したのか知らなかった。そんなある日、日本から一本の電話がかかってくる。相手は大沢造園の社長と名乗る男からであり、繭の両親にお世話になっていたとのことだった。彼は
繭の実の両親が山科屋という旅館を日本で経営していたことや、川口という男が繭の父親を事故に見せかけて殺し、旅館を乗っ取ったことなどを教える。実の両親の悲しい過去を知った繭は川口に復讐するために綿密な計画を立て実行しようとしていた。しかし、彼女は飛行機に乗っている途中に病に倒れ、結核療養所に送り込まれることになる。結核療養所は人生にあきらめた人たちが集い、時間の止まったような場所だった。繭は何とか復讐を果たそうと、療養所から脱走しようと試みるが・・・。
 この作品は療養所に行くまでの前半と療養所での様々な人間模様の後半と2部構成の作品となっています。前半は主人公・繭の復讐に燃える心情を中心に話しが進んでいくのですが、後半は繭の復讐だけでなく結核療養所にいる患者や医師などの哀しいドラマが展開していきます。結核ということで好きな人と別れさせられた女性、日本人に妻と子どもを殺された中国人医師などのドラマは主人公の復讐劇よりも胸に響くものがあります。
 歌も全てこの夜会のための書き下ろしですが、完成度の高い楽曲です。また中島みゆきの歌い方も素晴らしく、時に繊細に時に迫力のある声で、一つ一つの言葉に魂を込めて歌っています。特にラスト30分の歌い方は圧巻の一言です。クライマックスのシーンで歌われる『紫の桜』は舞台一面に降り積もる大量の桜の花びらの美しさと、中島みゆきの魂の叫びともいえるような迫力に満ちた歌い方に鳥肌が立つと思います。
  この作品は人間の宿業や因果応報、そして輪廻転生など仏教の思想が根底に流れており、人間がどう自らが抱える呪縛を解き放ち、生まれ変わり、新たなる自分を生きていくかが大きなテーマとなっています。
海嘯
  なお、『海嘯』は長編詩としても発表されています。舞台やDVDを見ただけでは分かりにくかった部分が、とても分かりやい詩として表現されています。主人公の生い立ちや心情が丁寧に表現されていますし、あのシーンや歌に込められた意味が明確にされており、『海嘯』を見た人にとっては必見の本です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4877283404/503-7536074-4044727
 限られた時間の中を生きる人間。限られた中で、何とか自分の夢や思いを叶えようと懸命に生きる人間たち。ある時は叶い、ある時は叶わないまま終わる人生。人生は思い通りにいかないもの。この作品は思い通りにいかず、傷つき、哀しみながらもまだ見ぬ未来に進んでいこうとする人たちに対するエールが込められた素晴らしい作品です。

会場:Bunkamuraシアターコクーン
1998.11.23~12.25
全25回公演

1.故国(インスト)
2.夢を叶えて
3.夢の代わりに
4.I am
5.故国
6.I am
7.カレンダー
8.知人・友人・愛人・家人
9.空しき人へ
10.夢の代わりに
11.二隻の舟
12.難破船
13.愛から遠く離れて
14.グッド・モーニング,Ms.ヤマシタ
15.献灯
16.白菊
17.明日なき我等
18.時効
19.フロンティア
20.夢の代わりに(インスト)
21.紫の桜
22.叶わぬ夢
23.フロンティア

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