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『ゲド戦記Ⅰ 影との戦い』街を捨て書を読もう!

『ゲド戦記Ⅰ 影との戦い』 著:ル=グウィン 訳:清水真砂子 岩波書店
影との戦い―ゲド戦記 1 『ゲド戦記』は『指輪物語』『ナルニア国物語』と並んで、世界三大ファンタジーの一つと言われている名作です。今年の夏にスタジオジブリで宮崎駿の息子・宮崎吾郎の手により、映画化がされることでも大変話題になっています。
 『ゲド戦記』は全部で6巻からなる大河小説です。『指輪物語』と違い、各巻ごとに話しが完結しているので、どの巻から読んでも楽しめます。
『ゲド戦記』は無数の島々と海からなるアースシーという架空の世界を舞台に、アースシーで一番の魔法使いであるゲドの波乱万丈の生涯が壮大なスケールで描かれていきます。『ゲド戦記』の魅力は主人公たちの緻密な心理描写にスリリングなストーリー展開、そして作者の深い思想性にあります。児童文学ではありますが、その奥深い内容に大人が読んでもとても楽しめ、考えさせられるファンタジー小説の傑作です。
 今回は『ゲド戦記』シリーズ第1作目の『影との戦い』を紹介します。第1作目は主人公であるゲドの少年期から青年期にかけての話しです。少年ゲトは魔法の才能があることを知り、魔法使いになるための修行を行います。しかし、若さゆえの未熟さや傲慢さから、ある日、魔法で影を呼び出してしまい、その影に追われることになってしまいます。影に追われ追い詰められるゲド。しかし、あるとき彼は恩師である魔法使いオジオンの助言を受けて、影から逃げることを止め、影に立ち向かい始めます。そしてラスト、ゲドは影と対決し、その予想外の正体を突き止めます。
 第1巻目の面白さは、アースシー各地を舞台にゲドが旅をしていくスケールの大きさと主人公ゲドの若さゆえの過信や不安・迷いに悩み苦しみながら、大人として成長していく物語の奥深さにあります。ゲドが影から逃げれば逃げるほど追い詰められ、影と向き合うようになり、初めて平静を得られるというストーリーはとても考えさせられるものがあります。
 若いときは理想と現実のギャップに苦しむものです。こうありたいと思う自分となかなか現実にはそうなれない自分。強くありたいが故に自分の弱さから目をそらしてしまい、逆に自分の弱さに怯え、無理してでも強がってしまう。若いときは誰しもそういう経験があると思います。ゲドは影との戦いの中で己の闇を自覚せざるえなくなります。そして闇を自らの一部分として受容したとき、彼は真の強さを持った人間らしい人間になるという話しは共感できますし、人間らしく生きるとは何かということを考えさせられます。
 また魔法というものがどういうものかしばしば本の語られるのですが、その考え方がとても面白く、奥深いです。アースシーでは真の言葉というものがとても大切にされており、魔法とは世界に存在するあらゆるものが持つ真の名に通じ、その存在に働きかけることを意味します。それぞれのものが持つ固有の名前。名前がある故にそのものはかけがえのないたった一つのものとして存在することができ、働きかけ、働きかけられることができる。名前というものが存在を浮かび上がらせるという作者の考え方はなるほどなと感心しました。
 『影との戦い』はとても優れた青春小説であり、緻密な設定がなされた奥深いファンタジー小説です。ぜひ一度読んでアースシーの世界に足を踏み入れてください。

ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに
     「エアの創造」

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