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『プライベート・ライアン』この映画を見て!

第60回『プライベート・ライアン』
見所:「冒頭30分の壮絶な上陸作戦の戦闘シーン!」
プライベート・ライアン

 私がこの映画を映画館で最初に見たときは大変衝撃を受けました。今まで見てきた戦争映画の中でこの映画ほど生々しい戦闘シーンはなかったです。まるで自分が戦場の中に放り込まれたような気分に陥りました。特に冒頭30分に及ぶオハマビーチ上陸作戦のシーンはすざましく正視出来ないほどでした。闘う準備もする間もなく撃たれて死んでいく兵士、なくなった自分の手を探す兵士、内蔵が飛び出し泣け叫ぶ兵士、そして海岸を埋め尽くす死体。この映画ほど戦争の現場の実態をリアルに描いた映画はないと思います。
  この映画の最大の見所は映像と音響です。映像の彩度を落として、まるで当時の従軍記者が撮影したような映像を見ているような雰囲気、ハンディ・カメラを使用して、ドキュメンタリータッチで撮影された映像は当時の戦闘現場を見ているような感覚を観客に与えます。また音響も素晴らしく、ドルビーデジタルサラウンドの性能を最大限に生かしています。冒頭の上陸作戦での360度さまざまな方向から飛んでくる銃弾の音、後半の市街地の闘いでの戦車の迫り来る重低音など音響も戦場のリアリズムが追求されています。この映画を見るときは是非ホームシアターをそろえて液晶やプラズマなどの大画面テレビで見ることをお奨めします。
 ストーリー:「戦闘で3人の兄を亡くしたライアン2等兵。軍上層部は兄弟全部を死なすわけにはいかないとライアンを故郷に戻すことを決める。そこでオハマビーチで過酷な闘いを生き延びたミラー大尉をリーダーに8人の特命隊が組まれる。軍上層部のこの命令に疑問をもちながらも、8人は過酷な戦況をくぐり抜けてライアンを探す。」
 ストーリーの方ですが映像や音響に比べるとあまり魅力はありません。戦地から兵士を連れ戻す任務に就いた兵士たち葛藤というドラマも生々しい戦闘シーンの前ではかすんでしまいます。また任務の途中で描かれる兵士たちのエピソードも戦争映画ではありきたりな内容です。またどこか第2次世界大戦におけるアメリカ賛美や偽善的なヒューマニズムの匂いが感じられる映画でもあります。私はこの映画のストーリー自体はあまり評価できません。
 この映画はストーリーや人間ドラマをじっくりと味あう映画でも、戦争の本質を描く映画でもなく、第2次世界大戦の生々しい戦闘シーンを疑似体験する映画です。そういう意味ではスピルバーグらしいテーマパークのアトラクション型タイプの映画です。(しかし、楽しく面白いアトラクションではありませんが・・・)この映画は戦争の悲劇を伝える反戦映画でも国の為に闘った兵士たちを哀悼し、愛国心を煽る映画でもないと私は思います。この映画はスピルバーグが今まで撮ってきた『ジュラシックパーク』や『ジョーズ』などのアトラクション型映画の延長にあり、観客が生々しい戦闘シーンを追体験することに主眼が置かれています。そういう意味ではこの映画は成功だったと思います。
 この映画以降、戦争映画における戦闘シーンの描き方は大きく変わりました。どの映画も、生々しく残酷な戦闘現場を前面に見せる手法を取るようになりました。それがいいかどうかは評価の分かれる所だと思います。しかし、この映画は戦争映画において記念碑的、また革命的な作品です。興味のある方はぜひ一度見てみてください!


製作年度 1998年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 170分
監督 スティーヴン・スピルバーグ 
脚本 ロバート・ロダット 、フランク・ダラボン 
音楽 ジョン・ウィリアムズ 
出演 トム・ハンクス 、トム・サイズモア 、エドワード・バーンズ 、バリー・ペッパー 、アダム・ゴールドバーグ 

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