『障害者の経済学』街を捨て書を読もう!
私は障害を持つ人の支援を仕事としているのですが、今回紹介する本は私にとって興味深い内容の本でした。障害者福祉や障害者問題というと、障害を持った人が身近にいないといまいちピンとこないと思います。障害者福祉や問題というと、どうしても当事者や家族、福祉関係者以外は無関心になりがちです。日本では障害を持つ人をどうしても弱者として遠ざけがちです。そのため、どうしても一般の人は障害を持つ人が社会で生きていくうえで抱える現状や問題を知る機会がとても少ないです。テレビなどでも一部を除き、障害をもっていてもがんばる人たち等の姿は取り上げても、生々しい実態はなかなか取り上げられません。
そんな中で、この本は脳性まひの子どもを実際に持つ経済学者が、経済学という視点から冷静に日本の障害者を取り巻く現状を分析して、一般の人に障害者をとりまく現状や問題を分かりやくすく解説しています。
親、施設、学校は本当に障害者本人の方を向いているのか?多額の予算は障害者本人のニーズに合わせて使われているのか?子供を自立させることをためらう障害者の親、設備は立派だがニーズにこたえきれていない施設、使いづらい運賃割引制度などについて経済学の視点から冷静に分析しています。
障害当事者や福祉関係者が読むと耳が痛い部分や違和感を感じたり、抵抗を感じる部分もあると思います。福祉というと今まで経済行為とは無関係であるという考えがありました。そのため経済という視点で福祉や障害者問題の話しが進んでいくのはとても刺激的でした。
著者は今障害を持つ人が抱えている問題をとても綿密にリサーチしており、日本の障害者を取り巻く課題が分かりやすく整理されています。そして経済学の視点から今後の福祉のあり方や障害を持つ人の支援のあり方を考える上で大切なことがたくさん書かれています。
ニーズを一定の制度の枠内に何とか入れ込もうとするシステムから、ニーズの多様性を尊重するシステムへどうしたら変えていけるか、この本で著者はさまざまな提案をしています。ぜひ、障害者やその関係者、そして一般の人もこの本を読んでいろいろ考えて欲しいと思います。
序章 なぜ『障害者の経済学』なのか
第1章 障害者問題がわかりにくい理由
第2章 「転ばぬ先の杖」というルール
第3章 親は唯一の理解者か
第4章 障害者差別を考える
第5章 施設は解体すべきか
第6章 養護学校はどこへ行く
第7章 障害者は働くべきか
第8章 障害者の暮らしを考える
終章 障害者は社会を映す
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