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『キル・ビル』この映画を見て!

第28回『キル・ビル』
こんな人にお奨め!「B級映画・子連れ狼・梶芽衣子・深作欣二・三池崇・サニー千葉を知っている人か、こよなく愛する人」キル・ビル Vol.1
 今回紹介する映画は見る人をとても選ぶ映画です。上にも書いたように、B級映画やかなりマニアックな日本映画好きの人が見れば、この映画は最高におもしろ映画です。しかし、年に数回しか映画館で映画を見ない人やゴールデンタイムにテレビで放映される映画しか見たことがない人がこの映画を見ても、はっきり言って面白くないかもしれません。むしろ眉をひそめてしまうかもしれません。
 この映画のストーリーはとてもシンプルで「仲間に裏切られた殺し屋の女が復讐を果たす」というだけのものです。そのようなシンプルなストーリーにも関わらず、2部作で4時間以上の大作になってしまっているのは、監督の映画愛ゆえです。この映画は監督が好きな映画のシチュエーションやシーンを自分で再現したくて作った究極のプライベート映画です。そして、この映画はタランティーノが自分の好きな映画を観客に紹介したカタログ映画みたいなものです。
 はっきり言って、この映画に感動や何かしらのメッセージ性を求めても何の意味もありません。この映画の正しい鑑賞の仕方は「このシーンはこの映画の引用だな」とか「この俳優をここに出すなんて」というような監督の引用やこだわりを見つけてニヤニヤ楽しむことです。この映画をどれだけ深く楽しめるかで自らの映画マニア度が分かります。
 第1部では監督の日本映画に対するリスペクトやこだわりが強く感じられる作りになっています。まず、この映画の全体の構成は梶芽衣子主演の『修羅雪姫』からの引用となっています。また主演のブライドのキャラクター設定には同じく梶芽衣子主演の『女囚さそり』という映画の影響を強く感じさせるものがあります。また過激な暴力シーンは『殺し屋1』や『ゼブラーマン』の三池崇監督の影響が強く感じられますし、青葉屋での日本刀を使った決闘シーンでは『子連れ狼』を監督した三隅研次監督の影響が大きいです。そしてタランティーノ が大好きだったという深作欣二監督に対する敬意やこだわりが随所に感じられます。栗山千明の起用は『バトル・ロワイヤル』からの影響ですし、サニー千葉が出るシーンは『柳生一族の陰謀』への完全にオマージュです。
 第1部はおもちゃ箱をひっくり返したかのようなハチャメチャな作りとなっています。強引だけどパワフルなストーリー展開、変な日本の描写、過激な暴力、クールでポップな音楽の使い方と見所は満載です。監督の演出や音楽センスの素晴らしさが随所で感じられますし、美術に衣装も凝りに凝っていますし、カメラワークや編集も巧みです。
 この映画は見る人をとても選ぶ映画です。誰もが楽しめる映画ではありません。しかし、もっと映画について知りたいという人は見て損はないと思います。この映画を見てから、引用元になっている映画をレンタルビデオで借りてきて見たりするとあなたの映画マニア度もぐっと上がることでしょう。
 では次回「キル・ビル2」のレビューを書きますので、お楽しみに。

製作年度 2003年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 113分
監督 クエンティン・タランティーノ 
製作総指揮 E・ベネット・ウォルシュ 、ハーヴェイ・ワインスタイン 、ボブ・ワインスタイン 
脚本 クエンティン・タランティーノ 
音楽 RZA 、ラーズ・ウルリッヒ 
出演 ユマ・サーマン 、デヴィッド・キャラダイン 、ダリル・ハンナ 、ルーシー・リュー 、千葉真一 

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