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「スタンリー・キューブリック」私の愛する映画監督3

第3回「スタンリー・キューブリック」
kubrick_head2 皆さん、スタンリー・キューブリックという映画監督をご存じでしょうか?彼が監督した映画はどれも芸術作品であり、映画史に残る名作であります。また彼の映画は常に革命的な映像表現と卓越した音楽センスで、後の多くの映画人に影響を与えています。
 私がキューブリック監督に出会ったのは高校生の時でした。その頃は映画ファンの間で名作と言われる作品を片っ端から見えていた時期でした。そして私が読んでいた映画の解説本で、SF映画の代表として『2001年宇宙の旅』が高く評価されていました。私は小さいときからSF大好きな人間だったので、SF映画の代表作と呼ばれるくらいなら一度は見ておかないということで、LDで購入しました。家の小さなテレビでの鑑賞だったのですが、私の予想を遙かに超えた作品でした。『スターウォーズ』や『未知との遭遇』などが好きだったので、この作品も宇宙を舞台にした娯楽映画だと勘違いしてました。それがいきなり猿のシーンが延々と続きなんだこの映画はと驚いたものです。そしてこの映画はただ者でないと気づき、姿勢を正して見入りました。宇宙船の映像美、クラッシック音楽の大胆な使い方、難解なストーリーに見終わった後は圧倒されてしまいました。この映画を作った人は天才に違いないと確信した私は、その後キューブリック監督の映画を片っ端から買い集め、鑑賞していきました。大学生の頃にはキューブリック信者になっており、月に一度は彼の映画を見ないと気がすまいようになってました。
 彼の映画には他の映画にはない幾つかの特徴があります。その特徴が彼の映画の魅力であり、名作と呼ばれる所以だとも思います。

①圧倒的な映像美
 彼はもともと写真家だったこともあって、映像にはとてもこだわっています。彼の映画はどのシーンも、絵画か芸術写真のように美しいです。効果的な照明の使い方、完璧な画面の構図、映画美術に対するこだわりなど、自分がイメージする映像を完成させるためへの追求心は半端ではありません。彼はいいショットが撮れるまで同じシーンを何回も撮り直したそうです。『アイズ ワイド シャット』でトム・クルーズは50回以上同じシーンを撮り直したそうです。また彼は毎回作品のテーマや雰囲気にあった映像を生み出すために新しい撮影技術も積極的に取り入れています。『バリー・リンドン』では蝋燭の光だけで撮影できるようにレンズを開発し、『シャイニング』ではステディカムという装置を使い、スムーズな移動撮影を行っています。言葉で説明するのは難しいですが、彼の映像美は一見の価値があります。
②シンメトリーな構図の空間
 彼の映画を私が見るときにいつも注目するのがシンメトリーな構図の空間設計です。シンメトリーな構図とは左右対称な構図のことをいうのですが、彼の映画はシンメトリーな構図のシーンが多いです。シンメトリーな構図は整然とした秩序ある美しさを感じる反面、どこか居心地の悪さを感じてしまいます。だから彼の映画で左右対称な構図の空間が出てくると、気になると同時にとても生理的違和感を覚えるんですよね。
③卓越した音楽センス
 彼の音楽の使い方はとても巧みです。どの作品においても、映画のテーマや映像の魅力をさらに引き立たせる音楽の使い方がされています。彼は時として普通の人なら考えもしないような選曲をします。このシーンにこの音楽をもってくるのかと観客を驚かせます。特に『2001年宇宙の旅』と『時計じかけのオレンジ』のクラッシック音楽の使い方は巧みでした。近未来宇宙の映像と古典的なクラッシックの融合、バイオレンス映像とベートーヴェンの融合などは新たなるクラッシック音楽の可能性を切り開いたと思います。また映画で歌が挿入されることが多いのですが、アイロニカルな使い方をしています。映像のもつ意味と相反する歌を流すことで、そのシーンが持つ意味を引き立たせています。彼の映画において音楽とは映像の従属物ではなく、映像の可能性を切り開くための大切な役割を担っています。   
④主人公への冷めた視点
 彼の映画はどの作品も主人公に感情移入できないような作りになっています。観客は神のような視点で客観的に主人公の姿を捉えて判断することを要請されます。彼は主人公の行動は描いても感情というものはあまり描きません。彼は常に観察者として主人公を見つめて追っています。彼は一人の人間の感情や人生を追う作家ではなく、彼は“ある人間”をサンプルとして取り上げ、人間とはどういう存在かをより大きな視点で捉えようとします。彼は普遍的人間性を追求した作家だと思います。
⑤深いテーマ性
 彼の映画はどれもジャンルが違います。戦争映画、SF映画、ホラー映画、歴史映画といろいろなジャンルの映画を監督しています。しかし、どの映画も共通したテーマがあります。それは「人間と暴力」、「人間と狂気」というテーマです。(『アイズ ワイド シャット』は少しテーマが違っていましたが) 彼の映画はどれも暴力に満ちています。戦争という暴力はもちろんのこと、人間が本質的に持っている暴力性というものを、どの映画でも追求しています。 また人間がもつ狂気というものにもとても興味があるようで、主人公である人間が狂っていく様子をいつも淡々と描いています。彼にとって人間とは暴力的存在であり、狂った存在であると映っていたのでしょうか。

 彼の映画は他の映画には魅力があります。そしてその魅力に一度はまってしまうと、何度でも彼の映画を見たくなります。彼が『アイズ ワイド シャット』撮影後に亡くなったのが残念です。
 是非、みなさんも一度ご覧ください。また「この映画を見て!」でも彼の各映画について取り上げていこうと思っているので、お楽しみに!

*スタンリー・キューブリック監督作品
1955年 非常の罠 
1956年 現金に体を張れ 
1957年 突撃  
1960年 スパルタカス 
1962年 ロリータ  
1964年 博士の異常な愛情  
1968年 2001年宇宙の旅   
1971年 時計じかけのオレンジ   
1975年 バリー・リンドン  
1980年 シャイニング 
1987年 フルメタル・ジャケット  
1999年 アイズ ワイド シャット 

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