『バットマン・リターンズ』この映画を見て!
第44回『バットマン・リターンズ』
この映画の見所!「バットマンとペンギン、キャットウーマン三つ巴の闘い、社会からはみ出した者たちの悲哀」
『チャーリーとチョコレート工場』を前回紹介しましたが、今回はティム・バートン監督の傑作『バットマン・リターンズ』を紹介したいと思います。バットマンはハリウッドで今まで5作品制作されております。1作目と2作目はティム・バートン監督、マイケル・キートン主演で制作され、根強い人気があります。3作目以降は監督・主演も毎回変わっており、作風も1、2作目と大きく変わっています。一番最新の作品が昨年公開された『バットマン・ビギンズ』です。この最新作『バットマン・ビギンズ』はクリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演で制作されました。この映画はリアリティ重視の作風で興行収入も評価も高く、同じ監督・主演での続編が予定されています。そんなバットマンシリーズの中で一押しの作品はどれかというと今回紹介する『バットマン・リターンズ』です。
この映画は画面・ストーリーともダークですが、ティム・バートン監督の魅力が詰まった映画です。表と裏の顔を持つ孤独と寂しさを抱えた主人公たち。暗いおとぎ話の世界のようなキッチュでダークでシュールな美術。ダニーエルフマンによる重厚でありなあがらどこかもの悲しい美しさを感じる音楽。見た目の明るさとは裏腹に主人交たちの暗い内面に切り込んだストーリー。登場人物・映像・音楽・ストーリーどれをとっても、ティム・バートンのダークさが前面に出ている映画です。
ストーリー:「正義と悪が表裏一体の街、ゴッサム・シティ。そこで一人の赤ん坊が生まれる。しかし、生まれた赤ん坊は普通の姿ではなかった。街の下水道に赤ん坊を捨てる両親。それから33年後のクリスマス、ゴッサムシティではペンギンという謎の怪人が出没するという噂で持ちきりになっていた。その頃、ゴッサムシティの実力者シュレックは会社の秘密を知った女性秘書セリーナをビルから突き落とし殺そうとしていた。しかしセリーナは猫から9つの命を与えられ、キャットウーマンとして蘇っていた。ゴッサムシティはペンギンとキャットウーマンの出没で恐怖と不安に陥っていた。街を守るためにバットマンが再び立ち上がる。しかし、ペンギンはシュレックと新たに手を組み、街を裏から支配しようと企んでいた。ペンギンの罠により、窮地に追い込まれるバットマン。バットマン、キャットウーマン、そしてペンギンとの三つ巴の闘いが今始まる。」
この映画のストーリーはオープニングからエンディングまでとても暗いです。そしてヒーロー者の映画にも関わらず、バットマンよりも敵役の方が目立っており、また感情移入できます。ティム・バートンはこの映画ではバットマンよりも適役のペンギンやキャットウーマンをに興味があったのか、敵役の2人がとても魅力的に描かれています。
特にペンギンは小さいときに奇形児だった故に、親に捨てられるという哀しい過去を持っており、悪役であるにも関わらず、どこか観客の共感と涙を誘ってしまいます。ペンギンはもちろん悪役ですのでひどいことを数多くするのですが、その裏に潜む哀しみや孤独もしっかり描いているので、ラストにバットマンによって倒されても、観客はスカッとした感情を抱けません。むしろどこかペンギンに対して同情の気持ちを持ってしまいます。
またキャットウーマンもバットマンの前に現れて、邪魔をするのですが、どこか哀しい存在です。キャットウーマンはもともとセリーナという不器用で孤独な女性が一度死んで生まれ変わった姿なのですが、セリーナという女性とキャットウーマンという怪人の二つの顔の間で苦しみます。
さらにバットマンも表の顔ブルース・ウェインと裏の顔バットマンの間で揺れ動きます。特にこの映画ではお互い正体を知らないまま、ブルース・ウェインとセリーナが恋に落ちるのですが、2人がバットマンとキャットウーマンというお互いの正体を知ったときの2人の衝撃と葛藤は見ていて胸が苦しくなります。そして映画のラストにバットマンが仮面を引き裂き、表の顔ブルース・ウェインをキャットウーマンに見せる場面は、バットマンの彼女に対する愛情が観客の胸に伝わってくる名場面です。
この映画は登場人物たちが表の顔と裏の顔を持っており、その二つの顔の間で苦しむ姿が描かれています。引き裂かれた感情の中で揺れ動いて生きる人間の葛藤や哀しみが観客の心に残る作品です。
ティム・バートンは社会からはみ出した者や社会の中を上手く渡っていけない人間やモンスターたちの孤独や哀しみを愛情たっぷりに描く作品が初期の頃は多かったのですが、この作品はそんな彼の持ち味が前面に押し出されています。
映像もティム・バートンのダークでキッチュな持ち味が活かされいます。1920年代のニューヨークを彷彿させるゴッサムシティ、おとぎ話の世界のような動物園、ゴシックホラー調のバットマンの館と見応えがあります。またティム・バートンならではの残酷なシーンや毒のあるユーモアなシーンもたくさんあります。
役者たちもいい演技をしており、特にペンギンを演じたダニー・デビートとキャットウーマンを演じたミシェル・ファイファーは悪役を楽しそうに演じています。またクリストファー・ウォーケンも悪役ですが、いい味を出してました。
この映画は勧善懲悪もののヒーロー中心の映画とはひと味違った魅力のある映画です。二つの顔の中で苦しむ主人公たちの姿や社会からはみ出した者たちの悲哀を描いた重厚な人間ドラマの映画です。ぜひ見てみてください。
製作年度 1992年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 128分
監督 ティム・バートン
製作総指揮 ジョン・ピーターズ 、ピーター・グーバー 、ベンジャミン・メルニカー 、マイケル・ウスラン
脚本 ダニエル・ウォーターズ
音楽 ダニー・エルフマン
出演 マイケル・キートン 、ダニー・デヴィート 、ミシェル・ファイファー 、クリストファー・ウォーケン 、マイケル・ガフ
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