『チャーリーとチョコレート工場』この映画を見て!
第43回『チャーリーとチョコレート工場』
こんな人にお奨め!「ちょっとブラックなチョコレートが好きな人。」
今回紹介する作品は昨年公開され大ヒットした『チャーリーとチョコレート工場』です。私はこの映画を劇場で見逃してしまい、DVDでの鑑賞となってしまったのですが、映画館で見れば良かったと後悔しています。
この映画はハリウッドでも異端児として知られるティム・バートンが監督をしています。彼の映画の特徴は、お茶目で残酷でシュールな映像・ブラックユーモアとヒューマニズムを織り交ぜたストーリー・どこか影のあるキャラクターです。彼の代表作としては『バットマンリターンズ』・『シザーハンズ』などがありますが、どの作品も見た目の派手な映像の割にどこか暗い雰囲気が漂います。
私は高校、大学の時は彼の映画の大ファンでよく見たものでした。彼の作品の映像のキッチュでシュールな映像、シニカルでダークなストーリーは私のお気に入りでした。ちなみに私が一番好きな作品は『バットマン・リターンズ』です。
さて、久しぶりに見た彼の新作『チャーリーとチョコレート工場』ですが思った以上にティム・バートン節全開な映像とストーリーに見入ってしまいました。
まず映像はおとぎ話の世界を見事に表現しています。ここら辺りはさすが『バットマン』や『スリーピー・ホロウ』を手がけたティム・バートンならではです。オープニングに出てくるチャーリーが住む傾きかけた家はゴシック調のデフォルメされた作りで見る者をおとぎ話の世界に一気に引き込みます。そしてメインのチョコレート工場。そのカラフルでキッチュでシュールな美術は見ていてとても楽しいです。特にウンパ・ルンパによるミュージカルシーンは彼ならではの毒のあるユーモア全開の映像と歌で最高でした。また映画マニアの監督ならではのお遊びシーンがあり、『2001年宇宙の旅』や『サイコ』のパロディシーンは見ていて笑ってしまいました。
次にストーリーですが原作を基に脚色されているのでどうかなと思ったのですが、ティム・バートン監督の持ち味が活かされたものになっていました。そこはティム・バートン監督。ストーリー中盤の工場の経営者ウォンカ氏と憎たらしい子どもたちのやり取りは監督の茶目っ気と皮肉、毒のあるユーモアがみごとに活かされたストーリー展開で笑いっぱなしでした。それでいて、ラストは家族の愛を描き、ほろりとさせる展開は素晴らしかったです。私は不覚にも最後の父と子の和解場面でべたに感動してしまいました
ティム・バートン監督というと以前は世の中から取り残された主人公たちの愛されない孤独や哀しみの姿を描いていました。それがここ最近は作風が変わって、『ビッグ・フィッシュ』など家族との和解をテーマにした映画を撮っており、この映画も前作に引き続いて家族愛を前面に押し出しています。
またこの映画はティム・バートン作品の中で一番道徳的な作品でもあります。家族を愛し、欲のない、謙虚な人間が報われる道徳的な話しは児童小説の影響からかと思います。しかし、今までどちらかというと社会からはみ出した主人公たちの姿を通して人間の本質を描いてきた作品を多く作ってきたティム・バートンなので、そこが私にはちょっと不満でもありました。
またこの映画は音楽が素晴らしいです。担当しているのは彼の映画音楽に欠かせないダニー・エルフマン。彼のコーラスを交えたフルオーケストラによる壮大なスコアーはおとぎ話の世界を見事に音楽で表現しています。またウンパ・ルンパによるミュージカルシーンの歌はシニカルでブラックな歌詞をリズミカルなメロディーにのせて唄っており、聴いていてとても楽しいです。
出演者も映画の雰囲気に合っておりました。ウォンカ氏を演じたジョニー・ディップは妖しい姿で登場し、少し笑ってしまいました。子どもっぽい面もあれば、皮肉屋でもあり、どこか影のあるウォンカ氏をとても楽しそうに演じていましたね。ティムバートンとジョニー・ティップのコンビは今回で4作品目でありますが、この2人がタッグを組むと面白いですね。またここ最近ファンタジー映画に出まくりの、私の好きな俳優クリストファー・リーがこの映画でも思いがけない形で出演していたところも嬉しかったです。
この映画、児童小説を原作にしていますが、一癖ある映画です。誰でも素直に楽しめる映画ではないかもしれません。しかし、ちょっとほろ苦く、見終わった後に幸せになれるこの映画。一度見てみる価値はあると思います。
製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ/イギリス
上映時間 115分
監督 ティム・バートン
製作総指揮 マイケル・シーゲル
原作 ロアルド・ダール
脚本 ジョン・オーガスト
音楽 ダニー・エルフマン
出演 ジョニー・デップ 、フレディ・ハイモア 、デヴィッド・ケリー 、ヘレナ・ボナム=カーター 、ノア・テイラー
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コメント
TB有難う御座いました♪
楽しい映画でしたよね!
バートン作品らしく色彩も豊かで。
ジョニデはこーゆー役をやらせたら抜群に上手いし、何よりウンパルンパが最高でした。
ではでは、これからもよろしくお願いします。
投稿: Aki. | 2006年2月21日 (火) 04時01分
こちらこそコメント・TBありがとうございました。ウンパ・ルンパはインパクト強烈でしたね。私も彼らのリズム感とブラックな歌詞に見入ってしまいました。
投稿: とろとろ | 2006年2月20日 (月) 22時56分
TB有難うございます。^^
ウンパ・ルンパの歌と踊り、インパクトがありすぎて忘れられません(笑)
ウォンカ役のジョニデが楽しそうに演じていたのが印象的でした☆
投稿: ルーピーQ | 2006年2月20日 (月) 22時48分
こんばんは!
ダニー・エルフマンの音楽がティム・バートンの世界へ更に彩を与えたような印象がありますね。
ウンパルンパのダンスにもう大ウケしてまして、劇場では彼が登場するたびに大笑いしそうなのを必死で耐えていました。DVDを購入したので、これからは自宅で心置きなく大笑いできそうです。ついでにウンパルンパダンスをマスターできそう(笑)
投稿: chibisaru | 2006年2月20日 (月) 18時33分
コメントありがとうございました。なるほど、そういう見方は考えても見ませんでした。そういえばチャーリーは誰も助けてはないですねえ。チャーリーは確かに善良すぎてもうひとつ人間味のないキャラクターではありますね。
元ネタの原作を読んでいないので、また読んで原作と映画の違いを自分で確かめてみます。
投稿: とろとろ | 2006年2月20日 (月) 16時38分
チャーリーは確かに「家族を愛し、欲のない、謙虚な人間」で道徳的に見えますけど、工場見学の他の悪童たちに救いの手を一度も差し伸べないあたり、人間味に欠けた中身のない記号としての「いい子」を皮肉ってるキャラクターのような気もします。
元ネタにないオチを入れたのも、チャーリーというキャラの魅力不足のせいかしらと皮肉なこと思いつつ(笑)、TBありがとうございました。
投稿: にら | 2006年2月20日 (月) 16時31分
こちらこそ、コメントとTBありがとうございました。
PEPINさんもキューブリックがお好きなのですね。私も大ファンです。そして彼は私が一番尊敬する映画監督でもあります。彼の作品は全て芸術品ですよね。ぜひ、またTBしてください!
投稿: とろとろ | 2006年2月20日 (月) 10時45分
TBありがとうございます。
私も映画館で見れば良かったと激しく後悔してますよ(泣)
あ、キューブリック好きなんですね!
私も大好きですよん♪
今後ブログのネタに詰まったらキューブリックのレビュー
書いていきますのでそのときにはまたTBさせてもらいます(笑)
投稿: pepin | 2006年2月19日 (日) 23時14分