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『2001年宇宙の旅』この映画を見て!

第38回『2001年宇宙の旅』 スタンリー・キューブリック特集1
こんな人にお奨め!「名作と呼ばれる映画を見たい人、SF映画大好きな人、人類の進化について考えたい人」
2001 今回はSF映画の金字塔とも言える『2001年宇宙の旅』を紹介します。
この映画は1968年に公開された映画ですが、今見ても、全然古くささをを感じさせません。ため息の出るほど美しい映像、クラッシック音楽の大胆で巧みな使い方、宇宙の広大さと静けさを表現した音響効果の素晴らしさ、人類の進化を扱った奥の深いストーリー、映像に隠された様々な暗喩。この映画は何度見ても新たなる発見のある映画です。
 私がこの映画を最初に見たのは高校の時でした。雑誌などの映画史に残る映画ベスト10に必ず登場する『2001年宇宙の旅』に、私は一体どんなSF映画なのかと期待が膨らんでいたものでした。しかし、LDを購入して家で見たところ、いきなり猿が争うシーンが延々と続き戸惑いました。その後、宇宙ステーションや月面のシーンを見ても、映像のリアルさ・美しさに感動したものの、淡々と進むストーリーに正直退屈したものでした。HALという人工知能コンピューターが出て、人間に反乱をする場面は手に汗握ったものの、ラストのスターゲート突入から一気に話しについていけなくなりました。この映画は私のSF映画への概念を見事に崩してくれました。私はSF映画というと思い浮かべるのは『エイリアン』や『スターウォーズ』でした。だから『2001年宇宙の旅』も宇宙を舞台に手に汗握る活劇が展開されると勝手に勘違いしてました。この映画を見て、映画は総合芸術だということを私は始めて認識しました。
 ストーリー:「400万年前の人類の夜明け。人類はまだ他の動物と大差ない生活を送っていた。そんな人類の前に現れる黒石板モノリス。人類はモノリスと接触することで道具を使えることを発見する。そして2001年。月面で黒石板モノリスが発見される。なぜモノリスは人類の前に再び現れたのか?この物体の謎を解明するため、5人の科学者を乗せた宇宙船ディスカバリー号が木星に旅立つ。しかし、宇宙船ディスカバリー号に搭載されていた人工知能コンピュターHALが人類に対して反乱を起こしてしまう。HALの反乱で4人死に、ボーマン船長一人が生き残る。なぜHALは反乱を起こしたのか、そしてモノリスはなぜ人類の前に現れたのか、謎を抱えたままディスカバリー号は木星に到着する。そこで ボーマン船長が体験したこととは・・・・。
 この映画はセリフが極端に少なく、140分の上映時間中で40分くらいしかありません。その為にストーリーの全体像を1回見ただけで把握するのはとても困難です。この映画はセリフでなく映像そのものに深い意味が込められています。観客は映像からこの映画のストーリーやテーマ性を解釈していかないといけません。そう言う意味ではこの映画は観客の想像力をとても刺激する映画であります。
 この映画はアーサー・C・クラーク が書いた原作本もあるのですが、そちらは映画でよく分からなかった部分もとても丁寧に解説されおります。原作は映画と違い作者の意図やメッセージが明確に記されており、とても分かりやく面白い小説に仕上がっています。もし映画を見て、ストーリーがもう一つ分からなかった方や映画では説明されなかった謎に対する詳細な理由が知りたい人はぜひ原作を読むことをお奨めします!
 私はこの映画を人類の進化と暴力について考察した作品だと思っています。人間は暴力によって常に争い、強者が弱者を支配して文明を進化させてきた過程をこの映画は描いています。映画の冒頭の人類の祖先が道具を使い動物を殺し、仲間と争い始める場面は人間の進化と暴力の関係を見事に描いてます。映画後半で展開されるHALの反乱とそれに対して人間がHALのスイッチを切る場面もとても暴力的です。人類の地球の支配者としての存在を脅かす新たなる支配者に対して争う姿を象徴的に描いています。この映画は人間(それも男性)が暴力によって地球の支配権を獲得していった過程を描いた作品であります。
 ラストはとても抽象的で一度見ただけでは、何が起こっているのか掴みにくいと思います。原作ではラストに関しても詳細に何が起こっているのか説明しているのですが、映画では全く説明されていません。映画のラストのスターゲート突入からスターチャイルド誕生までのシーンは人間と宇宙に存在する高度知的生命体との接触を描いています。そして、高度知的生命体はHALとの争いで勝ったボーマン船長を新たなる生命体として進化させます。それが映画のラストのスターチャイルドです。
 さて、この映画の見所は奥の深いストーリーだけではありません。映像・音楽・音響、どれも全てが考え抜かれており、この映画のテーマを見事に語っています。特に各場面の映像にはさまざなな意味が込められており、観客はこの映像は何を象徴しているのか考えながら見ていくことが出来ます。例えば、人類の祖先が投げた骨が、次のカットで宇宙船のショットへとつながり、それがさらに宇宙船内を浮かぶペンのショットへとつながる一連のシーンなどは文明の進化を見事に表したシーンだと思います。
 また音響も巧みです。映画の後半の宇宙船内で息づかいだけが聞こえてくるシーンは、緊張感と主人公の孤独と閉塞感が見事に表現されています。
 さらに映像と音楽のシンクロも最高で、クラッシック音楽と近未来の宇宙の映像が見事なくらいマッチしてます。最初はこの映画のために音楽が作られていたのですが、監督がそれを全部却下して、今のクラッシック音楽に変えたそうです。この選択はとても大成功だったと思います。映画の冒頭、「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れる中、惑星が一直線に並ぶシーンなんて鳥肌が立ちます。
 この映画はとても30年以上前に作られた映画だとは思えないほど、今見ても素晴らしい作品です。現実の2001年は残念ながら映画で描かれる2001年ほど宇宙に人類は進出できませんでした。しかし、この映画はとてもリアルに人間の宇宙進出を描いてます。30年以上前のCGもない時代にこれほどの完成度の映像を作ったとは驚くべきものです。映画は決して技術だけではなく、監督のセンスや美意識が大切なことがよく分かります。
 ぜひ皆さんも映画史に残る名作『2001年宇宙の旅』をご覧になってください!

製作年度 1968年
製作国・地域 アメリカ/イギリス
上映時間 139分
監督 スタンリー・キューブリック 
原作 アーサー・C・クラーク 
脚本 スタンリー・キューブリック 、アーサー・C・クラーク 
出演 ケア・デュリア 、ゲイリー・ロックウッド 、ウィリアム・シルヴェスター 、ダニエル・リクター 、レナード・ロシター 

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コメント

身内しか見ていないと思っていましたので、TBのお礼が遅くなりました。ありがとうございます。

本当に名画です。SFというより哲学といったほうがいいのではないでしょうか?

また寄らせていただきます。

投稿: ksbc | 2006年4月18日 (火) 13時23分

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