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『アマデウス』(ディレクターズカット版)この映画を見て!

第36回『アマデウス』(ディレクターズカット版)
こんな人にお奨め!「モーツァルトが大好きな人、天才と秀才の違いを知りたい人、才能のない自分に不満を持つ人」
アマデウス ― ディレクターズカット スペシャル・エディション 今年はモーツァルト生誕250年ということで、今回はモーツァルトを主人公にした『アマデウス』を紹介したいと思います。この映画は1984年に公開されたのですが、公開当時に大変高い評価を受け、アカデミー賞でも8部門受賞という輝かしい成績を収めています。
 この映画はイギリスの劇作家ピーター・シェーファーによって著された戯曲『アマデウス』を基に作られた映画です。戯曲『アマデウス』は1979年にロンドンで公演され人気を博し、日本でも松本幸四郎主演で制作されています。
 ストーリー:「1825年、オーストリアのウィーン。1人の老人が自殺を図る。彼の名はアントニオ・サリエリ。かつて宮廷にその名をはせた音楽家であった。そのサリエリが天才モーツァルトと出会う。モーツァルトは下品でいい加減な男だったが、音楽の才能に関しては天才だった。サリエリは彼の才能に激しく嫉妬する。そして次第になぜあのような下品な男に才能を与えたのか、神にも不信を抱くようになる。そしてサリエリはついにモーツァルトに対して恐るべき陰謀を謀る。」
 『アマデウス』のストーリーの面白さはモーツァルトの才能に嫉妬するサリエリという男の存在にあります。自分よりも遙かに優れた才能を持つものへの羨望と嫉妬。自分の方が才能を持つのに相応しい人間のはずなのに、自分よりも下品な人間に才能を与えた神への不満。サリエリの中に渦巻く感情は決して特別なものでなく、誰しもが持つ感情です。「なぜ自分にはこれだけの才能しか与えられなかったのか?なぜあいつにあれだけの才能が与えられたのか?」人生においてこんなことを一度は考えたことある人は多いと思います。そう言う人はこの作品を見るとサリエリに共感できると思います。この映画のテーマは誰しもが持つ天才への羨望と嫉妬そして妬みです。
 さて映画『アマデウス』の見所ですが、ストーリーはもちろんのこと、映像・音楽・役者の演技と全てにおいて見所満載です。まずプラハで撮影された映像はとても素晴らしく、18世紀のウィーンの雰囲気を見事に再現しています。豪華絢爛な衣装、18世紀の舞台の再現、18世紀の市民の生活の様子など映像的に見て楽しめる作品となっています。音楽は全編モーツァルトの名曲が流れており、この映画を見ると彼の代表作が一通り聴けます。
 そして役者の演技。サリエリを演じた
F・マーレイ・エイブラハムの演技は最高です。彼はモーツァルトへの嫉妬とねたみを見事に表現しています。そしてモーツァルトを演じたトム・ハルス。今までイメージしていたモーツァルト像を見事に壊してくれました。
 映画のクライマックスシーン、死にかけたモーツァルトが作曲するのをサリエリが手伝うシーンの2人の演技合戦は凄いです。死期が近づき最後の力を出して作曲モーツァルトと嫉妬や妬みを超えて天才の才能に少しでも近づこうとする秀才サリエリの姿が緊張感たっぷりに描かれ、見入ったものです。
 この映画は劇場公開版とディレクターズカット版と2バージョンあります。私はどちらも見たのですが、20分追加シーンのあるディレクターズカット版の方がストーリーが分かりやすく、深みが増したと思います。特にサリエリとモーツァルトの妻コンスタンツェが出会うシーンはラストの妻のサリエリへの態度の伏線となっており、ここが劇場版でカットされたのは惜しいなと思いました。
 あと私がこの映画で気になったのはサリエリが食べるお菓子です。サリエリは映画の中でやたらお菓子を食べるシーンが出てきます。そのお菓子が美味しそうなのですが、いったいどんな味なのでしょうね。ちなみにサリエリがお菓子を食べるシーンには彼の抑圧された欲望というものが暗示されているような気がします。格式や伝統を重んじ、気品高い人間でいようとするサリエリの押さえつけられた欲望のはけ口がお菓子を食べることでなかったのではと思います。

 モーツァルトの曲は頭を良くすると紹介されて以来、ちょっとしたモーツァルトブームが起こっています。是非、少しでもモーツァルトの曲を聴いたことある人ならこの映画はきっと楽しめると思います。また全くモーツァルトの曲を知らなくても、この映画は才能と嫉妬という極めて普遍的なテーマが描かれいるのでとても面白くご覧になれると思います。是非みなさんもこの映画を見てみてください!

製作年度 1984年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 180分
監督 ミロス・フォアマン 
製作総指揮 マイケル・ハウスマン 、ベルティル・オルソン 
原作 ピーター・シェイファー 
脚本 ピーター・シェイファー 
音楽 ジョン・ストラウス 
出演 F・マーレイ・エイブラハム 、トム・ハルス 、エリザベス・ベリッジ 、ロイ・ドートリス 、サイモン・キャロウ 

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コメント

こちらこそ、TB&コメントありがとうございました。アマデウスはモーツァルトを知る上でも楽しいですし、秀才の天才に対する嫉妬というドラマも面白いですし、本当に傑作ですよね。私もサリエリの立場だったら、なぜあんな男にと嫉妬するでしょうね。

投稿: とろとろ | 2006年2月16日 (木) 21時38分

TBありがとうございます!今年はモーツァルトイヤーなので、この「アマデウス」はタイムリーな映画ですよね。天才と秀才。一見同じに見えがちですが、この間にある差の大きさを感じます。

投稿: as | 2006年2月16日 (木) 19時42分

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» 映画「アマデウス」で始める、モーツァルト [とりあえず、やるっきゃないでしょ!]
モーツァルトを知るなら、先ずは映画「アマデウス」を 今日もヘロヘロになりつつ、仕事から帰ってきました。結局昨日は、深夜1時にセキュリティの関係から会社を追い出されてしまい、結局今日も仕事へ・・・不平不満を言いつつも、好きだからこそ頑張れるんですけどね。 そんな疲れた気分を癒してくれるのは、やっぱり音楽です。2006年はW.A.MOZART-モーツァルトの生誕250年に当たることもあり、色々なメディアでクラシック音楽が取り上げられ、クラシックファンとしてはかなり嬉しいです。モー... [続きを読む]

受信: 2006年2月16日 (木) 19時38分

» 映画「アマデウス」(1/2) [make myself just as hard]
映画「アマデウス」(AMADEUS, 1984・米国) サリエリは、モーツァルトの唯一無二の理解者であった。それが可能であったのは、サリエリとモーツァルトは二人で一人だったからだ。サリエリは、モーツァルトを愛していた。自分が生きる生きがいとして、モーツァルトを追い求めた。同時に、この上なく憎悪した。自分に欠けた部分を完備した存在に嫉妬し、彼をおとしめることで自分の生きる価値を保とうとした。これらはみな、同じことだ。愛、憎悪、羨望、嫉妬、憧憬。サリエリにとってモーツァルトだけが世界だった。彼だけ... [続きを読む]

受信: 2006年3月11日 (土) 13時19分

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