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『白い巨塔』この映画を見て!

第57回『白い巨塔』(劇場版)
見所:「田宮二郎のぎらぎらした演技、権力にまみれた人間たちの醜さ」
white_stone  現在、テレビで2004年に放映された唐沢寿明主演の『白い巨塔』が再放映されています。この作品は欲望渦巻く医学界の内幕を描き、何度見ても面白い作品です。この作品は何回も映像化されており、特に有名なのが、2004年の唐沢版『白い巨塔』と1978年の田宮版『白い巨塔』の2作品です。特に1978年のドラマは主演の田宮二郎が収録直後に自殺し、伝説的ドラマとなっています。今回紹介する映画はそんな田宮次郎が初めて財前教授役で主演した映画です。
 原作は山崎豊子が執筆。63年から65年にかけてサンデー毎日で連載され、大評判を呼びました。当初は第一審で財前教授が勝訴し、原告側の証言台に立った里見医師が病院を去るところで終わっていました。しかし、読者からの要望で67年から68年にかけて続編が執筆され、財前教授が第二審で裁判に負け、癌に倒れるラストまでが描かれました。
 今回紹介する映画は、続編が書かれる前に制作されているます。そのため、テレビのラストとは違い、財前教授が裁判に勝訴し、里見教授が去るところで終わります。その為に後味がとても悪く、権力を巡る人間の醜さと嫌らしさが前面に押し出された作品となっています。
 この作品の魅力は大学病院という権力の砦の中に渦まく欲望に対する様々な人間模様を描いたところにあります。権力を握りたい人間たち、権力にしがみつく人間たち、権力にひれ伏す人間たち、権力に反発する人間たち。権力の前で人間は如何に弱い存在か、権力が個人という人間にとって如何に冷酷なものか、この作品は観客に訴えます。
 この映画の見所は前半の教授選を巡る東教授と財前助教授の攻防シーンと後半の医療裁判を巡る財前教授と里見助教授の法廷での対決シーンの2つです。
 前半の選挙戦は何がなんでも教授になりたい財前と何が何でも彼を蹴落としたい東教授の熾烈な裏工作合戦が繰り広げられます。このシーンは派閥の中で自分の保身ばかり考える人間の醜さや嫌らしさがこれでもかと描かれます。
 また後半の裁判では権力の保身が描かれます。前半で財前教授を嫌っていた人間たちも、医学界の威信にかけて、彼を守ろうとします。権力を持つ者たちが権力を維持するために結束する姿は見ていてぞっとします。ラストシーン、里見教授が病院を去るシーンは悪に正義が敗北するという重い結末で、見る者に生々しい現実を突きつけます。
 監督は『真空地帯』『戦争と人間』などの社会派映画の巨匠・山本薩夫。脚本は『七人の侍』『砂の器』『八甲田山』『日本沈没』などの名作を手がけた橋本忍。この2人の力量で、この映画は膨大な原作を150分というコンパクトな時間にまとめ、緊張感漂うドラマに仕上がってます。また手術シーンはとてもリアルで、白黒映像でなかったら正視できないかもしれません。
 役者も田宮二郎を始め、加藤嘉、東野英治郎、田村高広、石山健二郎、小川真由美、藤村志保、下條正巳、加藤武と豪華な顔ぶれです。特に財前を演じた田宮次郎のぎらぎらした演技は見物です。自信過剰で権力欲に取り憑かれた男の嫌らしさや憎らしさを見事に表現しています。また周囲の役者も権力に取り憑かれた人間のあさましさを見事に演じてます。
 古い映画であり、ドラマと比べてはっしょっている部分も多いのですが、役者の演技と緊張感ある脚本と演出で一気に見せてくれます。ぜひ、唐沢版『白い巨塔』に夢中になった人はこの映画も見て損はないと思います。
製作年度 1966年
製作国・地域 日本
監督 山本薩夫 
製作総指揮 - 
原作 山崎豊子 
脚本 橋本忍 
音楽 池野成 
出演 田宮二郎 、小川真由美 、東野英治郎 、滝沢修 、船越英二

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