『マトリックス』この映画を見て!
第33回『マトリックス』
こんな人にお奨め!「今ある世界は現実ではないのではと疑ったことのある人、スカッとしたい人、サイバーパンク大好きな人」 いよいよ私がお奨めする3回連続近未来SF映画の紹介も最後になりました。今回紹介する映画は世界中で大ヒットした『マトリックス』。ご覧になった方も多いと思います。この映画は3部作まで作られましたが、一番面白いのは1作目です。あとの2作は設定的にはとても面白いと私は思うのですが、見せ方や話しの進め方が下手です。映像が凄いだけで、主人公に感情移入できないのが一番大きなミスだと思います。
さて1作目ですけど、公開されたのは1999年で、『スターウォーズ・エピソード1』と同時期の公開でした。『エピソード1』は観客の期待も高く、ふんだんなし資金を投入して制作されましたが、映画の出来はたいしたありませんでした。『スターウォーズ』好きの私も出来の悪さにショックを受けました。ちょうど『エピソード1』に失望していた時に現れたのが、この映画『マトリックス』。SFファンを喜ばせるようなサイバーパンク(電脳空間)な設定に、斬新な映像表現(アニメでは以前から見られた表現ですがね)、カンフーと銃による豪快でスカッとしたアクションと見所の多い映画でした。私もこの映画にはまり、何回も映画館に見に行きました。
わたしがこの映画に惹かれた理由は、「自分がいま生きているこの世界がもし現実でなかったら」という設定でした。私自身、小さいときから、「もしかしたら、この世界は誰かの夢の中で、私は夢の中の登場人物に過ぎず、夢が覚めたら私もいなくなるのでは」とか「この世界は神のような存在が操っていて、私たちはその人形に過ぎないのでは」とか考えたりしたものでした。この現実が本当に現実であるのかどうか、現実の中に生きる私たちがなかなか証明できないですよね。もしかしたら、この現実が架空な世界かもしれないわけで、ただ気づいてないだけかもしれませんしね。この話を続けていくと、哲学的な話しになってくるのですが、この映画はそういう私の思いに見事に応えた映画でした。
この映画では殆どの人間はマトリックスという電脳空間を現実だと思いこみ生活しています。一部それに気づいた人たちが人間が機械の奴隷になっている本当の現実を教え、本当の現実世界を人間の手に戻そうと闘いを機械に挑みます。この映画では主体性を剥奪された人間たちが主体性を取り戻そうと機械との争いに挑みます。そこには現代社会がシステムによって縛られ、個人の主体性が剥奪されいる現状に対する見事なアンチテーゼになっていると思います。
しかし私はこの映画を見ながら「なぜマトリックスの中で生きていくことがだめなのか?」という問いが私の中で生まれてきました。「虚構の空間とはいえ、そこで人間らしく生活することもできるのに、なぜ現実にこだわるのか?」「マトリックスは機械が作り出した世界に過ぎないから人間は許せないのか?」「もしこの世界が神によって作られたマトリックスであるならば人はそれを受け入れるのか?。」ここら辺のことを考え出すと、この映画のテーマそのものを否定してしまうのですが・・・。
話しが少し脱線しましたが、この映画は『キル・ビル』のようにいろいろな映画・漫画・本からの引用がなされています。特に日本アニメの傑作『攻殻機動隊』の影響が強く、設定や画面の構図などとてもよく似ています。よく似ているとは言え、日本では実写で出来ない映像表現をみごとやってのけたのは素晴らしいと思います。
この映画は『リローデッド』『レボリューション』と続編が2作作られましたが、この続編は蛇足でしたね。主人公が1作目で最強になってしまい、続編では全く感情移入できませんでした。あと脇役のトリニティーとモーフィアス2人の魅力が続編では半減されており、脇の又脇役の人たちの方が魅力的に見えてしまい、イマイチでした。
映像も凄いですけど、どこかCG臭さが抜けず、人間離れしすぎてノレないんですよね。CG物量作戦といった感じで、ドラマとかみ合ってなくて、映像ばかり先行してましたね。
ただ設定自体はとても面白かったです。『リローデッド』のラストに語られた「救世主は今までもいたこと、マトリックスが6回フォーマットされたこと、ザイオン自体もマトリックスのシステムに組み込まれていること」が説明されるシーンは1作目の話しを根底から覆し、一体どういう展開になるのかと期待しました。この発言で1作目で語られていた主体性の復権が見事に否定され、全てはシステムの意のままだという設定は刺激的でした。 しかし3作目は話しがスケールダウンしましたね。監督自身話しをどう収集していいのか分からなかったんでしょうね。 結局、スミスというマトリックス上のウィルスを駆除する話しになってしまい残念でした。
ただラストに機械と人間がお互いに譲歩するという結末はハリウッド映画らしくなくて好きです。それと同時に人間中心主義からの脱却も感じられ、「人間と非人間との違い」や「主体性の定義」などの問題提起も含まれていて決して失敗作とは言えないなとは思います。
ちなみに2作目のラストでネオが現実世界でも機械を倒せたのは、超能力ではなく、ネオの体が無線LANとなり、直接本体にアクセスして機械を止めたというだけです。彼は人間でもありながら、機械とも交信できる巫女さんのような存在になったのでしょうね。
『マトリックス』はとても知的に刺激的な映画でもありますし、感覚的にも楽しめる映画です。私のお薦めのSF映画です。
製作年度 1999年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 136分
監督 アンディ・ウォシャウスキー 、ラリー・ウォシャウスキー
製作総指揮 バリー・M・オズボーン 、アンドリュー・メイソン 、アンディ・ウォシャウスキー 、ラリー・ウォシャウスキー 、アーウィン・ストフ 、ブルース・バーマン
脚本 アンディ・ウォシャウスキー 、ラリー・ウォシャウスキー
音楽 ドン・デイヴィス
出演 キアヌ・リーヴス 、ローレンス・フィッシュバーン 、キャリー=アン・モス 、ヒューゴ・ウィーヴィング 、グロリア・フォスター
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コメント
TBありがとうございました。最近、久しぶりに「マトリックス」3作見直して、ブログ書きました。1作目は傑作なのに、2,3作目は残念ですね。無理に作ったような感じがします。3作目のラストはスミスの話にせざる得なかったのでしょうね。
投稿: とろとろ | 2006年2月15日 (水) 15時57分
こんにちは!
マトリックスの三部作の記事をあらためて読み直してみたのは久しぶりでした(笑)
「1」では、確かに私もこの世って実は誰かの夢の中じゃないか?それとも神様のゲームのコマの一つなんだろか?とか考えることがありました。
それが具現化されていたのが「1」。
これには衝撃がありました・・・今もこの世界はマトリックスの中かも??なんて考えたり(笑)
「2」は・・・トリニティのバイクシーン以外は・・・実はあまり覚えてません(^o^;
「3」は、なんだかだんだん風呂敷広がってきたぞ??これどうまとめるんだろ??あれれ?何?主人公ってネオじゃなかったのか???へ?なんで??なんで???とかっこよかったネオを捨てごまにされた気分でこんな気持ちのまま終わられてしまった_l ̄l○ って感じでした(笑)
三部作まとめてTBさせていただきました。
投稿: chibisaru | 2006年2月15日 (水) 14時13分