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『未来世紀ブラジル』この映画を見て!

第32回『未来世紀ブラジル』
こんな人にお奨め!「情報管理社会に抵抗を感じる人、ブラックユーモア大好きな人、近未来SF映画大好きな人」
未来世紀ブラジル スペシャルエディション 前回の『ブレードランナー』に引き続き、私の好きな近未来SF映画2本目の紹介です。
 今回の作品も80年代を代表する近未来映画の傑作です。監督は『12モンキーズ』や『フィッシャーキング』で有名なテリー・ギリアム。『ブレードランナー』とはまた別の意味で強烈な映像、皮肉たっぷりのストーリー、ラスト15分のどんでん返しなど見所の多い映画です。
 私がこの映画を最初に見たのは小学生の時でテレビの深夜放送で見た記憶があります。私はその頃、喘息持ちで夜も眠れない日がありました。そんな眠れないある日、テレビをつけると放映されていたのが『未来世紀ブラジル』。最初はボーと見ていたのですが、強烈な映像とよく分からないけど怖いストーリー、そしてラストの予想外のオチに子どもながらに凄い映画を見たという満足感を覚えたものでした。
 その後、レンタルビデオを借りては見ていたのですが、一昨年にDVDが発売されたので購入して何回も見たものです。
 ストーリー:「20世紀のどこかの国。そこは徹底的に情報が管理された社会だった。情報局に勤めるサムはいつも天使のような女性と大空を飛ぶ夢を見ていた。そんなある日、情報局の書類ミスで、一般市民がテロリストと間違われ処刑されてしまう。後処理に追われるサム。そんな彼女の前に夢で出会った女性と同じ顔の女性ジルに出会ってしまう。しかし、ジルとの出会いがサムの人生を大きく狂わしていくことになる。」
 この映画の一番の見所はやはり映像です。近未来でありながらどこかレトロで懐かしさを感じる映像。それでいて、どこかファシズム時代のイタリアやドイツの官僚主義的雰囲気を彷彿とさせます。その映像と対比するかのような、サムが見る夢の奇妙奇天烈なイマジネーション溢れる映像。天使が舞い、鎧武者が現れるその映像は一度見ると脳裏から離れられないと思います。
 またストーリーもとても皮肉が効いており、官僚主義の愚かさや、管理社会の恐怖が見事に描かれています。書類がないと何も動けず、問題があっても責任を取らない官僚たち。情報が国家によって管理され、官僚の情報管理ミスで人生を左右される市民たち。閉塞的で息の詰まるような社会の姿が見事に描かれています。そして、そんな社会の中でほんの一時の自由を求めようとしたサムがいつの間にか社会を敵に回し悲劇に陥っていく姿が、悪夢のように描かれいます。 そしてラスト15分のどんでん返しは見ているものを圧倒します。悪夢か現実か分からないような映像の連続と衝撃のラストシーンは見る者を凍りつかせると思います。ラストはあれはあれで主人公は幸せなのかもしれませんが。
  またこの映画が描く悪夢のような世界は決して他人事ではないなと最近思い始めました。この映画では爆弾テロのシーンが何回も挿入されるのですが、現実爆弾テロは頻発してます。映画ではテロに対抗するために情報を管理し、街にテロ対策の警備を増強して対応しているわけですが、現実も街にカメラが設置され、警官が立ち、交通機関では手荷物チェックが強化されてきてます。情報管理も情報技術が進むにつれて巧妙に行われてきています。官僚主義の愚かさは今の行政を見れば分かるとおりです。現実がどんどん映画の世界に近づいているような気がして、なんとも薄ら寒いです。
 是非、皆さんもこの悪夢のような世界を見てみてください。決して映画の中の話しだとは思えませんよ。

製作年度 1985年
製作国・地域 イギリス/アメリカ
上映時間 143分
監督 テリー・ギリアム 
脚本 テリー・ギリアム 、トム・ストッパード 、チャールズ・マッケオン 
音楽 マイケル・ケイメン 
出演 ジョナサン・プライス 、キム・グライスト 、ロバート・デ・ニーロ 、イアン・ホルム 、キャサリン・ヘルモンド 

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コメント

TB、感謝です♪

何と!御幼少のみぎりにこれをご覧になったとですか!
カゴメがこれを小さい時に観てたら、きっとトラウマになってたかも(笑)。

>現実がどんどん映画の世界に近づいているような気がして、なんとも薄ら寒いです。

この映画を「リアリティーがない」と、
丸っきり見当ハズレな批評をする人もいますが、
実際は、とても鋭い予見性に満ちていて、
本当に観れば観るほど、薄ら寒い感覚に襲われますね。
文句なしの傑作です!

投稿: カゴメ | 2006年5月25日 (木) 14時15分

こちらこそ、コメントありがとうございます。この映画を悪夢のような世界だと思っていましたが、現実もだいぶ悪夢のような様相になってきましたね。爆弾テロしかり、管理社会しかり、確実に世界はブラジル化してますね。
いい夢見て過ごしたいものです。
では又遊びにきてくださいね

投稿: とろとろ | 2006年2月15日 (水) 08時34分

こんにちは!TBありがとうございました。
>またこの映画が描く悪夢のような世界は決して他人事ではない
確かに。例えば、最近の小学生がGPS機能のついた携帯を持たされたり(持たざるを得なかったり)する、こういう身近なレベルから、何と言うか、管理社会化してきているような気がします。
50年後の世の中、決してこの映画を夢物語とは思えなくなるかもしれませんね。

投稿: Ken | 2006年2月14日 (火) 23時06分

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