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『ブレードランナー』(最終版)この映画を見て!

第31回『ブレードランナー』(最終版)
こんな人にお奨め!「『マトリックス』や『攻殻機動隊』・『A.I』などのSFが好きな人、人間とは何か考えたい人。」
ディレクターズカット ブレードランナー 最終版 今回から連続3回にわたり、私の好きな近未来SF映画を紹介します。まず第1作目として紹介するのが『ブレード・ランナー』(最終版)です。この映画は、80年代を代表するSF映画であり、今でも熱狂的な人気を誇る作品です。
 私が始めてこの映画を見たのは高校の時でLDで買った『ブレード・ランナー』(最終版)でした。始めて見たときはその退廃的で美しい近未来映像に圧倒されたのを覚えています。そして何回か見るにつれて、この映画に込められた「人間とは何か?」というテーマについて自分なりによく考えたものです。

 ストーリー「2019年のロサンゼルス。街は酸性雨が終始降り注ぎ、太陽の光に照らされることは殆どなかった。この時代、レプリカントという見た目も知能も感情も人間と変わらないアンドロイドが他の惑星で人間の為に過酷な労働を強いられていた。そんなある日、4体のレプリカントが地球に逃亡。彼らの捕獲を命じられた「ブレードランナー」デッカードが、潜入したレプリカントたちを追い、L.Aの街を彷徨う。
 この映画の一番の見所は何と言っても、何と言っても2019年の近未来ロサンゼルスの暗く退廃的な描写です。酸性雨降り注ぎ、終始薄暗い空。乱立するビルとその合間を飛び交う車。ビルに設置された巨大スクリーンに映し出される強力ワカモトの広告。まるで香港のような無国籍な街並みを行き交う東洋人の姿。街そのものがこの映画の主役のようなものです。とても映像にこだわっており、一度見たら目に焼き付くような光景が次から次へと出てきます。
 そのような街の中で展開されるストーリーはハードボイルドタッチで、淡々と潜入したレプリカントたちを追うデッカードの姿が描かれていきます
 しかし、この映画では主人公のデッカードの話しよりも、追われる側のレプリカントたちの話しの方がとても印象に残ります。4年で死ぬように設定されたレプリカントが何とか延命してもらおうと、自分たちを作った設計者に会いに行くシーンは胸が詰まります。知能も感情も人間と同じく持っているのに人間が作ったアンドロイドであるが故に、奴隷のように扱われ、命の期限まで設定されてしまっているという哀しみ。
 
この映画はストーリーが進むにつれて、非人間的な人間たちと人間的な非人間と「どちらがより人間らしいのか」という問いかけを主人公にも見ている観客にも投げかけてきます。  そして何とも哀しい映画のラストは「人間とは一体何か?」という難しい問題を名が観客に問いかけてきます。
 生きる美しさと哀しみを説き、死んでいったレプリカントの姿をみると、人間と非人間との境界線はどこで引くべきなのかとても悩んでしまいます。知能も感情も人間と全く同じだった場合、ただ肉体の構成が違うという理由から非人間的に扱うことが許されるのか?そして、人間が人間と同等の知能と感情を持つ存在を作り上げたとき、人間はその存在に対して神のように振る舞うことが許されるのか?科学が進む現代、この問題は差し迫った問題だとも言えます。
 さて、この映画の映像・ストーリーの魅力は紹介しましたが、もう一つ音楽もとても魅力的です。きっと皆さんもエンド・タイトルに流れる曲はテレビで聴いたことがあると思います。(報道番組でとてもよく使われていました。)
 音楽を作ったのはギリシャのヴァンゲリスという作曲家で、シンセサイザーを使って魅力的な音楽を数々生み出しています。代表作としては『炎のランナー』が有名です。この作曲家がこの映画の為に作った曲(1部違うアルバムの曲を挿入していますが。)は近未来の退廃的な映像にとても合っており、映画のハードボイルドな雰囲気をより高めています。ここまで映像にぴったり寄り添う音楽はそうないと思います。映画のサントラも名盤なので、是非映画を見てはまった方は購入して聞いてみてください。
 この映画はその後のSF映画やSF漫画にも多大な影響を与えている名作です。ぜひ一度は見て損はしないと思いますよ。
 最後に。この映画は劇場公開版・完全版・最終版の3つのバージョンがあります。それぞれの違いを説明します。まず劇場公開版は全編に主人公のモノローグが入り、ラストも取って付けたようなハッピーエンドのシーンが挿入さています。完全版は劇場公開版に残酷なシーンが追加されています。そして最終盤は監督自らが再編集しており、劇場公開版で会社に無理に付け加えられて、気に入らなかった主人公のモノローグとラストのハッピーエンドのシーンが削除され、一部追加シーンがあります。私は
監督の意向が反映された最終盤がお奨めです。 

製作年度 1982年
製作国・地域 アメリカ/香港
上映時間 116分
監督 リドリー・スコット 
製作総指揮 ハンプトン・ファンチャー 、ブライアン・ケリー 
原作 フィリップ・K・ディック 
脚本 ハンプトン・ファンチャー 、デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ 
音楽 ヴァンゲリス 
出演 ハリソン・フォード 、ルトガー・ハウアー 、ショーン・ヤング 、エドワード・ジェームズ・オルモス 、ダリル・ハンナ 

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コメント

はじめまして、TB$コメントどうもありがとうございました。
この映画は、原作、脚色、美術、演出、音楽、キャスティングなど、全てがパーフェクトでしたよね。ということは、プロデューサーが偉大だった、ということが言えるかもしれませんね。
では、では今後ともよろしくお願いします。

投稿: David Gilmour | 2006年2月22日 (水) 21時44分

こちらこそ、TBとコメントありがとうございました。この映画は確かに私も人生の映画ベスト10に入る映画です。とても、20年以上前の作品とは思えませんねえ。この映画の世界観は今のSF映画にも強烈に影響与えてますよね。

投稿: とろとろ | 2006年2月16日 (木) 09時45分

TBありがとうございました。
すごい映画ですよね。
私が観たのは最近ですが、いきなり人生のTOP10に食い込んでいます。
また映画のエントリでお世話になるかと思いますが、よろしくお願いします。

投稿: 紫式子 | 2006年2月16日 (木) 01時30分

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受信: 2006年3月15日 (水) 20時44分

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