『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』この映画を見て!
第54回『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』
見所:「不条理で幻想的なストーリー。ユートピアという名の友引高校学園祭」
今回は私が大好きなSFアニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』を紹介します。「うる星やつら」というと高橋留美子原作で80年代にテレビアニメ化もされ、人気を博した作品でした。私もよくテレビであたるとラムを中心に展開されるラブコメディをいつも楽しみに見ていました。映画化も今回紹介する作品をあわせて、合計4本制作されています。
さて今回紹介する作品は「うる星やつら」シリーズの中でも異色の作品であり、カルト的な人気を誇っています。監督は『攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー』の監督で有名な押井守。この映画は監督の色が強く出ており、「うる星やつら」を知らない人が見ても十分に楽しめる内容になっています。
ストーリー:「友引高校の文化祭前日”。ラムもあたるも泊まり込んで仲間と共に楽しく準備をしていた。しかし、温泉マーク先生はこの世界のある異変に気付く。“友引高校の文化祭前日”がどういうわけか繰り返し毎日続いているのではないかと考える温泉マーク先生。そして、家に訪問して生きたサクラさんに相談する。しかし、次の日、温泉マーク先生は消えてしまう。そして、その後もあたるやラム、面堂やメガネたちレギュラー陣を除き、友引町から人々が次々と姿を消していく。」
この映画を最初に見たときは、幻想的で予測不能なストーリーの緊張感に引き込まれ、謎が解き明かされていく後半の怒濤な展開に圧倒されたのを覚えています。中盤に友引高校とその周辺の謎が解き明かされるシーンがあるのですが、そのシーンは何度見ていて鳥肌が立ちます。またその後に描かれるユートピア世界も見ていて魅力的です。
この映画で描かれるテーマは夢と時間、そしてユートピアです。
今いる世界が現実に存在するのか、それとも夢という虚構の世界なのか?もしこの世界が誰かが見ている夢の中で、自分は夢の中で存在しているのだったら・・・。自分が今いる世界は現実か夢なのか?いったいそれを誰が証明できるのか?この映画はそんな現実と虚構の世界の曖昧さを描きます。そして時間という概念が人間の意識が作り出した産物にすぎないのではという哲学的問題提起を観客に投げかけます。
またこの映画は理想の世界・ユートピアの魅力と虚しさを描きます。退屈な日常から離れ、友だちとワイワイがやがや騒ぎながらお祭りの準備をする楽しさ。ずっと永遠にこの時間が流れたなら、どんなに楽しいことか?こんな思いを皆さんも抱いたことがあると思います。この映画はそんな祭り前日の準備が永遠に続く世界を描きます。そして、映画の後半は友人以外誰もいなくなった廃墟の友引町が描かれます。そこでは時間も社会も存在せず、ただ友だちと遊びほうけるだけの日常が繰り返されます。社会的役割も義務も負わず、自分を邪魔をするものが誰もいない世界。それは自分にとって理想的な世界です。しかし、それと同時にそんな世界の退屈さや虚しさを描きます。自分にとって必要なものしかない時間の止まった世界の退屈さと虚しさ。この映画はユートピアの抱える魅力と虚しさという二面性を描きます。
映画のラストは、一瞬現実に戻ったようにも思えますが、よく見るとこの世界がまだ夢の世界なのか、現実の世界に帰還したのか曖昧なまま終わります。それは現実と虚構の曖昧になった世界。それは現実の虚構化と虚構の現実化が進んできた現代において決して映画の中の出来事だとは言えない時代になってきています。そういう意味この映画はとても時代を先取りした映画だと思います。
この映画は今見ても面白く、とても考えさせられるアニメ映画です。原作を知っている人も知らない人もお奨めの一本です!
製作年度 1984年
製作国・地域 日本
上映時間 98分
監督 押井守
原作 高橋留美子
脚本 押井守
音楽 星勝
声の出演 平野文 、古川登志夫 、神谷明 、杉山佳寿子 、島津冴子
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『トゥルー・ロマンス』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『アンストッパブル』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『スカーフェイス』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『バトル・ロワイアル』この映画を見て!(2011.01.04)
- 『大地震』映画鑑賞日記(2011.01.03)
「この映画を見て!~お奨め映画紹介~」カテゴリの記事
- 『君の名は』この映画を見て!(2017.01.22)
- 『トゥルー・ロマンス』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『アンストッパブル』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『スカーフェイス』この映画を見て!(2011.01.09)
「アニメ映画」カテゴリの記事
- 『君の名は』この映画を見て!(2017.01.22)
- 『ホーホケキョ となりの山田くん』映画鑑賞日記(2010.10.23)
- 『おもひでぽろぽろ』映画鑑賞日記(2010.10.23)
- 『東京ゴッドファーザーズ』この映画を見て!(2010.09.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント