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この映画を見て!「生きる」

第22回「生きる」
見所:死を宣告された人間にとって生きるとは?志村喬の名演技に注目!生きる

 この映画は日本映画史、世界映画史共に名高い映画であり、世界中の映画評論家、関係者から人気のある映画です。監督は黒澤明。日本を代表する映画監督です。黒澤明は世界中の映画制作者のあこがれと影響を与えた人物です。彼は惜しくも1998年に他界されています。彼は生前30本の作品を作っており、「生きる」は黒澤明が一番絶頂期だった1950年代に作った映画です。
 さて「生きる」という映画ですが、この映画のテーマはずばり人間が生きる意味とは何かです。

ストーリー:「市役所に30年勤める男、渡邊勘治。彼は今まで一度も無断欠勤することもなく、お役所勤めをしてきて、今は市民課の課長をしている。そんな彼がある日、自分が胃ガンを患っていることを知る。余命はあと半年から一年。彼は今までの自分の生き方がお役所の事務仕事一辺倒だったことを振り返り、残された人生をどう生きるか悩むことになる。彼には男で一つで育てた息子がいた。しかし自分の家庭を持ち、自分の退職金ばかり当てにしていて、自分の病気のことを伝えられない。孤独な彼は街に出て、いろいろな遊びに繰り出したりする。そんな中、同じ職場の女性に惹かれる。彼女の若く、溢れるエネルギーに触れる中、彼は自分も生きた証がほしかったと気づく。そして、お役所の請願に上がっていた小さな公園を作るために奔走することになる。そして彼は公園が完成した半年後に亡くなる。彼の葬儀に集まるお役所の仲間たち。彼らはなぜ彼が公園作りに奔走したのかを話し合う。その中で見えてくる、官僚組織の縦割り組織、事なかれ主義の虚しさ。そして死を直前に公園作りに自分の生きた証を残す主人公。ラスト、仲間たちは葬儀の席で主人公みたいに生きようと決意するが、結局組織の中で埋没した日々を過ごす。」
 この映画、脚本・役者の演技・演出、どれも素晴らしく見所満載です。脚本に関しては、オープニングの3人称のナレーションの巧みさ、押しつけがましくないセリフ、2部構成の大胆さと、巧みです。演技に関しても主演の志村喬は言うに及ばず脇役の人も良い味を出してます。演出はさすが黒澤明といった感じです。
 この映画が制作されたのは今から50年以上前ですが、2005年現在においても映画の語るメッセージは十分通用するものです。今まで公務員というお役所仕事の中で、与えられた役割を機械的にこなしていた主人公。映画の冒頭で次のようなナレーションがあります。「彼は時間をつぶしているだけだ。彼には生きた時間がない。つまり彼は生きているとはいえないからである」それは生きる屍のような主人公の人生。そんな彼が死の宣告を受けてから、生きることについて悩み、考え始めるのですが、その姿はとても見ていてつらいものです。死を前に始めて自分の生を考えるという哀しみと皮肉。それは同時に見ている側にも普段忘れていた「生きる」とは何かについて考えさせられます。
 もし自分があと半年しか命がなかったから、一体何をするのか?多くの人間は自分が死ぬことなど普段意識せず生きています。過去に比べて、現代多くの人が死から遠ざかった生活を過ごしています。そして繰り返される毎日を生きることの価値や意味を見失ってしまった私たち。生きてきた以上避けて通れない死。死を通して見えてくる生。 この映画は私たちに「生きる」価値というもの、そして人間は「死ぬ」という事実を改めて問うていきます。
 また映画の後半はお役所の同僚が彼の葬儀に集まり、彼の死を悼む場面があります。そこで交わされる内容は彼がなぜお役所の縦割り組織を超えて、公園作りの事業を達成できたのかを延々と話し合います。そして硬直した縦割り組織で事なかれ主義のお役所仕事の限界をみんなで語り合います。生活のために組織に縛られた人間たちの姿は哀れに見えます。主人公のように組織の掟を超えて、生きていこうと思いつつ、現実で敗北する姿。それは現代社会での私たちの生きる姿とだぶって見えてきます。
 私たちもいつか必ず死ぬときがやってきます。死ぬ間際、私たちは自分の生をどう振り返るか、人間らしい満足な生を送ったと言えるのか?この映画を見ると自分の生と死を振り返ることができます。

製作年度 1952年
製作国・地域 日本
上映時間 143分
監督 黒澤明 
脚本 黒澤明 、橋本忍 、小国英雄 
音楽 早坂文雄 
出演 志村喬 、日守新一 、田中春男 、千秋実 、小田切みき 

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» 「生きる」 [気分がいい、運がいい、ありがとう、で幸せになろう。]
みなさん、こんにちは。日本全国、寒いのですかね。確かに今年はすごく寒いです。でも、みなさんのブログを拝見しているとすこしづつあったまってきます。ありがとうございます。今日の寒さで思い出したので、今日は黒澤監督の映画、「生きる」についてお話します。... [続きを読む]

受信: 2006年1月22日 (日) 16時11分

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