街を捨て書を読もう「ねじまき鳥クロニクル」
「ねじまき鳥クロニクル」 作:村上春樹 新潮社
『ねじまき鳥クロニクル』3部作合わせて1000ページを超える大長編で、発表当時大変話題になった作品でした。タイトルや各章に付いているサブタイトルだけを見ると一見どんな話しかつかめないですが、文章はとても読みやく、一度読み始めると次の展開が気になり、最後まで一気に読める作品です。ストーリーは主人公の僕が突然失踪した妻の失踪した理由と彼女の行方を探す話しを主軸に、主人公の周囲の現れる奇妙な人物たちのさまざまなエピソードが合間合間に描かれるという重層的な構造になっています。そようなストーリー展開の中で「人間が生きるとは何か?」「心の闇とは?」「世界はどういう構造になっているか?」「他者をどこまで理解することができるのか?」これらの普遍的なテーマを追求する作品になっています。
ごく平凡な日常を送る主人公の「僕」の周りで突然起こり始める非日常的な出来事。今まで当たり前におもっていたものが、当たり前でなくなり、平穏な日常の裏に潜む非日常的で奇妙な世界に足を踏みれていく主人公。人間の理性で割り切れるほどこの世界は単純ではなく、つねに謎と不条理に満ちている。常識・文化・文明の中で忘れ去られる人間の心の闇・世界の闇。闇の中で浮かび上がる存在という光。生と死、暴力と愛、性と欲、偶然と必然、相反する世界で生きている私たち人間という存在。この小説は現代人が見失いかけている存在の本質・世界の本質について、極めて鋭い考察のなされている小説です。それでいて文章は読みやすく、面白いので、是非興味のある方は読んでみてください。
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