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2005年12月18日 - 2005年12月24日

久石譲の世界

 皆さんに質問です。サントリー緑茶「伊右衛門」、NHKスペシャル「人体」シリーズ、宮崎駿の映画、北野武の映画、これらに共通するものは何でしょう?
 答えは音楽を担当している作曲家がみんな同じだということです。その作曲家の名前は久石譲。この作曲家の名前は知らない人も多いと思いますが、日本人であれば多くの人が一度はどこかで彼の曲を聴いていると思います。彼の代表作は、多すぎてなかなか絞れません。もし挙げるとすると、宮崎駿がスタジオジブリで監督した作品の全ての音楽を彼が担当してします。「ナウシカ」から「ハウルの動く城」までの全ての曲を彼が手がけています。また北野武の映画や最近だと「男たちのYAMATO」なども手がけており、彼はおそらく日本で一番有名な映画作曲家の一人だと思います。
 そんな彼と私が出会ったのは小学校の理科の時間に見た「人体」というNHKのドキュメンタリーでした。このドキュメンタリー、当時としては画期的なCGを多用して、人体の内部を描き、とても面白く夢中になって見ていました。その時、私はバックに流れる曲のメロディーがとても美しく耳に残り、サントラを買ってもらい、家でよく聴いていました。そして、一体誰がこのような曲を書いたのだろうと気になり、調べたところ久石譲という人だということが分かり、彼のCDをその後ずっと買い集めていきました。(現在で70枚くらい彼のCDを所有してします。)
 彼の音楽の魅力を一言で言うと、シンプルでありながら力強く、美しいメロディーラインだと思います。1度聴くと、心に残る曲が多いです。特に宮崎駿の映画と久石譲の音楽は相性が良く、どの映画の曲もメロディーが印象的で、その曲を聴くだけで、映画のシーンが思い浮かぶほどです。彼の音楽なしの宮崎駿映画って想像ができません。
 また宮崎駿の映画作品以外も、彼は多くの映画やCMの曲を手がけて印象的なメロディーを残しています。CMでいうと、ここ最近だとサントリー緑茶「伊右衛門」、TOYOTAカローラの曲などが、特に印象的でした。また映画だと北野武作品での彼の音楽は宮崎作品とはまた違ったマイナーで美しい旋律の曲を残しています。(最近の作品では二人のコラボレーションはしてませんが)
 映画やCMの仕事以外も、長野パラリンピックの開会式の演出をしたり、映画監督として「カルテット」とという映画を制作したり、新日本フィルハーモニー交響楽団が結成した新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの音楽監督を務めたりしています。コンサートも毎年しており、オーケストラの時もあれば、アンサンブルの時もあり、魅力的なコンサートが多いです。私も何回かコンサートに行っていますが、聴いたことのある曲が多く、楽しみやすいです。ここ最近だと、チェロ奏者9人とピアノによるアンサンブルのコンサートa Wish to the Moon~Joe Hisaishi & 9 Cellos 2003 はとても良かったです。チェロの力強く繊細な響きが、久石メロディーを引き立ててました。(DVDにもなっているので、興味のある人は是非見てください。)また昨年大阪城西の丸公演で行われた野外コンサート「ワールドドリームオーケストラツアー」ファイナルもとても素晴らしいものでした。野外でそよ風の吹くなか、ビールを飲みながら、ラピュタやナウシカの曲を聴く時間は至福の時間でした。今年は行けなかったので、是非次回は行きたいものです。
 
 また彼はオリジナルアルバムもたくさん出しており、名盤が多いです。初期はシンセを多用してミニマム・ミュージックのアルバムを発表しており、今聴いても刺激的で面白い曲が多いです。(スタジオジブリの曲しか聴いたことのない人にはびっくりするほど前衛的で攻撃的な曲が多いです。)中期はボーカルものの作品を発表。(これは私はいまいちですが。)その後、紆余曲折の90年前半、さまざまな形式のアルバムを発表した後、ここ最近はオーケストラを中心にしたアルバムとピアノを中心にしたアンサンブル形式のアルバムを多く発表しています。特にピアノ中心のアルバム「ピアノストーリー」シリーズはメロディーも構成もいい曲が多いです。
 彼の曲は繊細でありながら力強く、シンプルなのに複雑で奥深く、攻撃的で優しい、相反するものが同居していて、聴いていて面白いです。

 是非、みなさんもテレビで彼の曲が流れるときは、じっくり耳を傾けて下さい。

 久石譲公式サイト:http://www.joehisaishi.com/home.html
 

 私の初心者にお薦めアルバムBEST5

5位 菊次郎の夏サウンドトラック:北野武監督映画のサウンドトラック。ピアノとストリングの構成で清々しく郷愁漂う曲で詰まっています。また一時期TOYOTAカローラのCMにも使われてました。

4位 天空の城タサウンドトラック:宮崎駿とのコラボレーションの音楽はどれも印象的なものが多いのですが、一つ挙げるならやはり「ラピュタ」。オープニングのオーケストラによる壮大な曲、主人公の少年が朝にトランペットで吹く曲、エンディングの「君をのせて」。どれも素敵な曲ばかりです。

3位 Piano Stories:全編ピアノソロのアルバム。もちろん演奏は久石譲。みんな知っている「ナウシカ」「トトロ」などの曲に加え、他の曲も印象的なメロディーばかり。

2位 Works2:フルオーケストラのアルバム。もののけ姫やHANABIなど映画で使用された曲を中心に構成。どれもオケの編曲が上手く、聞き入ってしまいます。ストリングスの使い方が巧みです。

1位 ENCORE:全編ピアノソロのアルバム。初心者の人はまずこのアルバムから聴いてほしいです。久石メロディーの真髄がここにあります。編曲も上手です。

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中島みゆきの世界

             中島みゆきライヴ!私が昔から好きなアーティストに中島みゆきがいます。中島みゆきの歌は多くの人がどこかで聴いたことあると思います。今年でデビュー30年になるのですが、コンスタントにヒット曲を出してきました。(70年代だと「わかれ歌」、80年代だと「悪女」、90年代だと「空と君との間に」、00年代だとNHKのプロジェクトX主題歌で使われた「地上の星」。)彼女の歌はCMやドラマの主題歌になることも多いです。ここ最近だと1月から始まる米倉涼子主演の連ドラ『松本清張 けものみち』の主題歌に彼女の歌「帰れない者たち」が起用されています。
 以前はテレビにもあまり出なかったのですが、最近は「サッポロビール」のCMや「プロジェクトX」最終回への出演と、テレビでも姿をよく見るようになりました。
 知名度ではかなり高い中島みゆきですが、しかし彼女の歌に対するイメージは「暗い」という印象を持つ人が今も多いと思います。私も知り合いに中島みゆきが好きだというと「暗いねえ」という返事が帰ってくることが多いです。
 そこで、今回は中島みゆきの歌の魅力について紹介したいと思います。

 私が彼女と出会ったのは小学5年生の時からでした。上級生の卒業式で彼女の「時代」という曲が歌われ、その歌詞を聴いたとき、その歌詞の内容にとても惹かれました。
 「時代」という曲は彼女の代表作であり、みなさんもよく知っていると思います。この歌の魅力はその歌詞の普遍性とスケールの大きさ、力強さにあります。どんなに挫折し傷ついても、果てしなく続く時間という存在が流れの中では、繰り返しおこることであり、だからこそ生まれ変わることもやり直すこともできるというメッセージをもつこの曲。彼女の人生観や世界観が濃縮された曲だと思います。
 「時代」という曲から彼女の歌を知った私は中学に入った頃から、意識して彼女のアルバムを集め始めます。それから今日に至るまで、彼女のアルバムが出るたびに買いそろえては中島みゆきワールドに浸っています。またコンサートや90年から彼女が言葉の実験劇場というコンセプトで始めた夜会にも何回か通っています。夜会は特に面白い舞台で、中島みゆきの魅力が詰まっています。ここ最近はとてもチケットの入手が困難なのですが、今年はゲットすることができたので、とても楽しみです。(夜会については後日また詳細に紹介したいと思っています。)
 私にとって彼女の歌の魅力は、歌詞とその歌い方にあります。
 彼女は何百曲という作品を作っていますが、様々なタイプの曲があります。失恋を扱ったもの、独り身の女性の生き方を扱ったもの、マイノリティの哀しみを扱ったもの、社会批判を扱ったもの、人間が生きることの意味を扱ったものなど幅広い内容の曲があります。暗い曲もありますが、コミカルな曲やスケールの大きな曲、癒される曲、生きることへの力強いメッセージに溢れた曲も数多くあります。
 彼女のつくる歌詞は私小説のようなもの、ストーリー性溢れるもの、神のような視点から人間の生き方を語っているものなどあり、その幅広さは魅力です。また日本語の選び方・使い方、ものごとの喩え方も巧みで、何を伝えようとしているのか聴きいる曲が多いです。普段使わない日本語が出てきて意味を考えたり、音声として聴いた言葉と歌詞カードで文字として見る言葉が違っており、意味の多重性があったりと、聴けば聴くほど味のある曲が多いです。

 彼女の80年前半までの曲は確かに暗い歌詞が多いのです。しかし、よく聴くと、とても励まされたり、慰められたりします。落ち込んでもうだめだと思った先に見える光というか、絶望をくぐり抜けたからこそつかめる希望というものを感じることができます。彼女の歌詞は失恋を通して、自己のエゴイズムや受けた傷と徹底的に向き合おうとする内容が多いです。向き合いたくない自分と向き合うからこそ、見えてくる自分の感情や姿を知ることで、逆に縛られていたものから解放され、先に進むことができるということでしょうか。
 
 彼女が作る多くの曲の根底には、名もなき弱い人間への励ましと許し、そして生きることの哀しみとかけがえのなさに満ちあふれています。悩んでいるときやしんどいときに彼女の曲を聴くと、いろいろあるけど生きていこうという気になります。彼女の歌の持つ包容力はとても大きいです。彼女の歌には仏教のおおらかさ、キリスト教のような愛と許しの力があります。

 今後も中島みゆきの魅力については随時紹介していきたいと思っています。お楽しみに。 

 私のお奨め中島みゆきの曲 ベスト10(本当は10以上ありますが・・・。)

10位 「糸」 :結婚式で歌える中島みゆきの曲です。最近、ミスチルの桜井さんもカバーしてます。)
9位 「瞬きもせず」:山田洋次監督「学校3」の主題歌。歌詞がとてもいいです!
8位 「空と君との間に」:安達祐実主演の「家なき子」主題歌。「君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる」というフレーズ。究極のラブソングだと思います。
7位 「地上の星」& 6位 「ヘッドライト・テールライト」:プロジェクトX主題歌のこの2曲名もなき人たちへの暖かい応援歌。
5位 「ファイト」:落ち込んだり、挫折したりしたときは是非、この曲を!
4位 「誕生」:生きていると出会いや哀しみもある。しかしそれもあなたが生まれてきたから経験できたこと。中島みゆきがあなたが生まれてきたことを祝福してくれます
3位 「わかれうた」:中島みゆきの代表作であり、失恋の歌ナンバー1
2位 「命のリレー」:人が生きることの意味をスケールの大きい歌詞で歌い上げます。
今年11月に放映された「女の一代記」主題歌

1位 「時代」:中島みゆきの全てが詰まった曲。時間の中を旅する人間への応援歌

☆中島みゆきお奨めベストアルバム「大吟醸」

中島みゆき

 このCDを聴くと、中島みゆきのさまざまな世界の一端を知ることができます。代表作・名曲ぞろいでお買い得です。

1.空と君のあいだに
2.悪女
3.あした
4.最後の女神
5.浅い眠り
6.ルージュ
7.誕生
8.時代
9.わかれうた
10.ひとり上手
11.慟哭
12.狼になりたい
13.旅人のうた
14.ファイト!

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私の愛する映画監督2「ジェームスキャメロン」

第2回「ジェームス・キャメロン」

 私が中学・高校時代に好きだった監督の一人にジェームス・キャメロンがいます。彼はターミネーターシリーズやタイタニックなど数々のヒット作を送り出して来ているの、知っている人も多いと思います。
 キャメロン映画の魅力を上げると、力強い女性たち・VFXを巧みに使った迫力ある映像・たたみかけるような展開と心を揺さぶる感動を併せもつシナリオ・見せ場の見せ方の上手さなどです。
 彼はB級映画の巨匠ロジャー・コーマンの下で美術や特殊効果などを担当しながら、現場で映画の作り方のノウハウを覚えた人であります。そのため、自分で映画を撮るときも、現場の統率をうまくこなして、自分の撮りたい映画を撮ってきた人です。デビュー作は「殺人魚フライングキラー」というB級作品ですが、彼の名を一躍有名にしたのは「ターミネーター」です。「ターミネーター」は低予算でありながら、タイムトラベルをうまく利用したシナリオ・低予算でありながら見せ方の工夫で、成功を収めました。その後は「エイリアン2」の監督に抜擢され、大ヒットをとばし、その後次々とSFXを利用した大作を作り上げていきます。
 彼の映画のおもしろさはまずSFXの使い方の巧みさがあります。どの映画もこれみよがしなSFXというより、まずシナリオがしっかり作られています。そのシナリオに基づいて、監督の中で作りたい画のイメージをしっかり持っているので、そのイメージをどう具体的映像として見せるか考え、うまくSFXを取り入れています。(最近の監督だとピーター・ジャクソンがSFXの使い方が巧みだなと思います。)
 次にストーリーテラーとしての巧みさがあると思います。どの映画もストーリー展開の仕方が上手で、話しの前半でしっかり観客に主人公への感情移入をしてもらい、後半のドラマティックかつ緊張感あふれる展開で観客が我を忘れて映画の中に入り込めるような作りになっています。「タイタニック」にしろ「エイリアン2」(完全版)にしろ、主人公の心情が丁寧に描き込まれているので、後半の盛り上がりに観客も盛り上がれるんですよね。
 あと力強い女性像も彼の映画の魅力ですよね。どの映画でも女性は男と対等に渡り合うたくましい存在として描かれています。彼の映画は一般社会における女性の立場の向上と進出という時代の変化を感じるとることができますよね。

 タイタニック以降、ドキュメンタリー映画など撮っていますが、娯楽映画をもう何年も撮っていません。次回作に日本のコミック「銃夢」を原作に「バトル・エンジェル・アリタ」 という作品を撮る予定だそうです。近未来の荒廃した都市を舞台に主人公のサイボークの女性が生きる意味を探し出すというストーリーだそうですが、どんな作品になるかいまから楽しみです。

私のお奨めジェームス・キャメロンBEST5

タイタニック

5位「タイタニック」

世界中で大ヒットした「タイタニック」。ジェームス・キャメロンの魅力が詰まった映画ですねえ。力強い女性・迫力に満ちた映像・たたみかけるようなストーリー展開と全編見所満載です。ただ個人的に、メインのストーリーであるラブストーリーより、バンドメンバーなど脇役の人のドラマやスペクタクルな映像に惹かれたものです。
 

エイリアン2 完全版

4位「エイリアン2」(完全版)

続編で成功した映画って少ないと思うのですが、この映画は見事な続編映画です。1作目と路線を変更したのが良かったのでしょうね。シナリオがとても良く、後半のこれでもかと続く緊張感あふれるストーリー展開は何度見ても手に汗握ります。特に完全版は主人公リプリーの心情が丹念に描き込まれているので、後半の主人公の行動の理由がより深く理解できると思います。それにしても最後の母性対母性の対決はすごいですねえ。男の出る幕はなしです。

ターミネーター〈特別編〉

3位・2位「ターミネーター1&2」

ターミネーターシリーズ(3作目は除く)はとても良くできたSFアクション映画です。タイムトラベルものとしては矛盾点もありますが、勢いと情熱にあふれた映画だと思います。1作目と2作目のつなげ方もうまく、見せ場も、その見せ方も迫力があり面白いですし、何よりストーリーが、面白く感動的ですよね。未来を変えようとする人間・ロボットたちの姿を見ると熱い思いになります。だからこそあの3作目は作るべき作品ではなかったと思ってます。

アビス<完全版> プレミアム・エディション

1位「アビス」(完全版)

この映画、あまりヒットしませんでしたが、私は1番お気に入りのキャメロン作品です。深海を舞台にしたSFパニック作品ですが、映像・ストーリー共に見応えがあります。特にストーリーはタイタニックよりも私はこの映画の方が感情を揺さぶられます。海底基地からの脱出、謎の生命体との遭遇というストーリーの中で、夫婦愛や反核・人類の平和などについて語られていきます。全編海底の中なので映像的にはとても息苦しいシーンが続きますが、後半の主人公である夫婦のやりとりは心を熱くするものがあります。

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この映画を見て!「シザーハンズ」

第14回「シザーハンズ」
見所:悲しく切ないストーリー、キッチュな映像、ジョニー・ディップの目

シザーハンズ〈特別編〉

前回紹介したギルバート・グレイプに引き続き、ジョニー・ディップの主演作の紹介です。この映画はクリスマスにぴったりの切ないラブストーリーです。監督がティム・バートンという人で、今年ジョニー・ディップ主演で「チャーリーとチョコレート工場」という映画を作っており、この映画も同じコンビで作られた映画です。
 ティム・バートンは私の好きな映画監督の一人であり、代表作に「バットマン」や「マーズ・アタック」「スリーピー・ホロウ」などがあります。この監督の持ち味は、B級SF、ホラー映画やおとぎ話の世界のような映像とマイノリティなキャラクターに焦点を当てた、ダークで切ないストーリーです。(最近の映画はそんな彼の持ち味が発揮されてませんが。)

この映画は監督の持ち味が最大限発揮された映画です。

ストーリー:「丘の上の発明家の屋敷に一人住んでいるエドワード。彼は発明家によって作られた人造人間。しかし、発明家はエドワードが完成する前に死んでしまい、彼の手は仮に付けられたハサミのままだった。丘の上で何年も暮らしていたが、ある日、ふもとの町の化粧品販売の女性によって、丘を降りて、町で暮らすことになる。彼は最初、好奇な目で見られるがハサミの手を利用して植木や散髪を行い、町の人気者になる。そして一人の女性に恋をしてしまう。しかし、彼は手がハサミであるが故に、彼女抱きしめることができない。そんな中、ある事件から彼は町の住人から嫌われ、恐れられる。そして、彼は町を追い出されることになる。」

 この映画、とても切なく、悲しく、残酷で美しいおとぎ話です。オープニングの20世紀フォックスのタイトルロゴから一気におとぎ話の世界に引き込まれます。まず主人公のエドワードが手がハサミの人造人間というところが面白いアイデアだなと思います。手がハサミであるという設定がこの映画のストーリーをとても面白いものにしています。またエドワードと彼が恋をするキムとの関係の描写も彼の手がハサミであるが故にロマンティックで切なく、見るものを引きつけます。
 ラブストーリーとしてもこの映画は素晴らしいのですが、それだけでなく人間への痛烈な風刺が込められています。主人公が純粋で美しい人造人間であればあるほど、周りの人間たちが最初は彼をちやほやし、持ち上げながら、途中から手の平を返したように冷たくあしらう姿は見ていてつらくなります。それは主人公がただ単にかわいそうだからつらくなるだけでなく、自分の中にもあるマジョリティ(多数派)のマイノリティ(少数派)に対する偽善性や差別意識を暴かれているような気がして見ていてつらくなります。(名作と呼ばれるおとぎ話にはどこか人間の本性を暴くようなメッセージが込められているものです。)

 映像的にも見所満載です。まずこの映画が、美術が秀逸です。丘の上の屋敷のゴシックホラー映画調の雰囲気でありながら、どこか人間的暖かみをもったユニークな構造の美術、それと対照的にカラフルで美しく整然としているけれど、どこか冷たく非人間的な感じのする町など、美術がこの映画のストーリーや雰囲気をうまく伝えています。またエドワードが氷で彫像を作るシーンなどロマンティックな映像も、見ていてうっとりとします。
 衣装やヘアスタイルもユニークで面白く、おとぎ話のような世界観をうまく表現しています。
 音楽もティムバートン監督映画には欠かせないダニーエルフマンが、幻想的で美しくもの悲しいスコアを聴かせてくれて、映画を盛り上げてくれます。
 そして、この映画を魅力的にしている最大の要因はジョニーディップの演技です。特に彼の目が最高です。彼の透き通った、どこか憂いを帯びた目を通して、エドワードの孤独やさびしさなどがじんじん伝わってきます。

 もうすぐクリスマスですが、是非皆さんこの哀しく美しいおとぎ話をご覧ください。

製作年度 1990年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 98分
監督 ティム・バートン 
製作総指揮 リチャード・ハシモト 
脚本 キャロライン・トンプソン 
音楽 ダニー・エルフマン 
出演 ジョニー・デップ 、ウィノナ・ライダー 、ダイアン・ウィースト 、アンソニー・マイケル・ホール 、キャシー・ベイカー 

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この映画を見て!「ギルバート・グレイプ」

第13回「ギルバート・グレイプ」
見所:ジョニー・ディップ、レオナルド・ディカプリオの演技と静謐で詩的な映像

ギルバート・グレイプ

この映画、私が高校の時に劇場でみて、とても印象に残った映画で、久しぶりにDVDで再見したのですが、改めて素晴らしい映画だと再確認しました。

ストーリー:「アメリカのエンドーラという小さな田舎町。その街で食料品店に勤めながら、家族と暮らす主人公のギルバート・グレイプ。彼は家族を守るために、自分の人生を捧げている。彼の父は家で自殺をして、母はそのショックで過食症になり、体重が250キロになり家に引きこもっている。弟アニーは知的障害をもち、まもなく18歳になろうとしている。ギルバートの生活は家族を支えることで精一杯の毎日だった。
 そんなある日、アメリカをトレーラーハウスで移動して暮らしている一団が街を通りがかり、そのトレーラーの1台が故障して、しばらく町の外れに滞在することになる。そのトレーラーに乗っていた女性ベッキーと出会うギルバート。彼は彼女の自由な生き方に憧れ、恋に落ちる。彼は始めて家族を守る自分以外の自分を見つけるが、家族から離れることもできず、悶々とした日を送る。しかし、彼の家族に大きな転機が訪れる。」

 ストーリーはとても地味ではありますが、とても心に深く響くものがあります。周囲の環境で自分の人生を思う通りに生きられない人にとって、この映画はとても共感できるものがあると思います。家族を守るために、自分の人生を捧げる主人公の姿は見ていて、とても切なくなります。こういう境遇の人は、たくさんいると思うのですが、私もかつてそういう生き方をしていたので、見ていて胸苦しくなる場面が多かったです。自分の人生あきらめているけど、どこかであきらめきれなかったり、家族を時にうっとうしくおもいながら、家族を愛しているが故に見捨てることもできない、揺れ動く気持ちを暖かな眼差しで捉えている映画です。(ここから少しネタバレです)だからこそ、この映画のラスト、主人公が新たな人生に向かっていくシーンはとても爽やかな心晴れる気持ちになりました。
 この映画の見所はジョニー・ディップ、レオナルド・ディカプリオの演技です。まず主人公のギルバートを演じるジョニー・ディップ。この映画の彼の演技は素敵です。、主人公の優しさが故の哀しみ、苛立ちがとても伝わってきます。また知的障害をもつアニーを演じたレオナルド・ディカプリオ。彼はこの映画で若くしてアカデミー賞の候補にもなったのですが、とても上手です。知的障害を持つ人の姿をナチュラルに演じています。おそらく彼の出演作の中で一番いい演技をしています。また他の出演者たちも素敵な演技をしています。特に250キロ体重がある母親役を演じた人は、かつて肥満を苦にして5年間外出恐怖症になった経験のある人だそうで、リアリティーのある演技をしています。
 映像もとても美しいです。主人公をとりまく自然の風景をとても美しく捉えています。少し離れたところから主人公たちの姿やドラマを捉えるシーンが多いのですが、それが優しく厳かな雰囲気を映画に与えています。

 家族愛と、家族を愛するが故の苦しみや哀しみ、そして生きる希望が伝わってくる素敵な映画です。是非、見てみてください。

製作年度 1993年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 117分
監督 ラッセ・ハルストレム 
製作総指揮 ラッセ・ハルストレム 、アラン・C・ブロンクィスト 
原作 ピーター・ヘッジズ 
脚本 ピーター・ヘッジズ 
音楽 アラン・パーカー 、ビョルン・イシュファルト 
出演 ジョニー・デップ 、ジュリエット・ルイス 、メアリー・スティーンバージェン 、レオナルド・ディカプリオ 、ダーレン・ケイツ 

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「ピーター・ジャクソン」私の愛する映画監督

第1回「ピーター・ジャクソン」
 ここ最近、私が特に次回作が楽しみな映画監督といえばピーター・ジャクソンです。(ここからはピーター・ジャクソンのことをPJと略して書きますね。)一昔前は「ブレインデッド」というホラー映画マニアの間で人気を博したゾンビ映画の監督して有名だったPJ。ここ最近は「ロード・オブ・ザ・リング3部作」、「キングコング」と超大作を監督して観客・批評家受けもよいメガヒットを連発しています。
 私がPJの映画と初めて出会ったのは「ロード・オブ・ザ・リング」でした。この映画はファンタジー小説のバイブルとも言われる「指輪物語」を元に作られた映画ですが、最初この映画を見たとき、指輪物語の世界観をここまで表現できるのかと舌をまいたものです。ファンタジー映画は大好きななので、今までもいろいろ見ていたのですが、この映画の出来の良さ、おもしろさは他の映画と比べものにならず、誰がこんな映画作ったのかと気になったものでした。(「ロード・オブ・ザ・リング」のすばらしさついては後日また紹介します)そしてピーター・ジャクソンという監督を知り、過去の作品を見ていきました。するとどれも傑作ばかり。特にホラー映画が昔から好きだった私には、彼の映画はどれも満足のいくものばかり。一気にお気に入りの監督になりました。
 私の中でPJの映画はどれも見終わった後の満足感がとても大きいです。彼の映画はどれも観客が期待しているもの以上のものを見せてくれるんですよね。ブレインデッドのラストやキングコングの髑髏島のシーン、ロード・オブ・ザ・リングの戦闘シーンなど演出的にここまでやるかという時があり、見ている人はその迫力に圧倒されるんですよね。VFXの使い方もこれ見よがしでなく、まずドラマがあってのVFXなので、客は映画に感情移入しやすいんでよね。時々、見ていて話しの進め方もべたなときもあるんですが、べたなことを小細工なしにストレートに見せてくれて、逆に感動したりするんですよね。また彼の映画は、見せ方に勢いがあるんですよね。だから少々の粗も見逃してしまうというか許してしまうというか・・。編集のリズムがいいというか、見せ方がうまいというか、勢いに押し切られて、観客も見入ってしまうんですよね。
 さらに彼の映画は見ていると、映画愛を感じるんですよね。「キングコング」も「ロード・オブ・ザ・リング」も「ブレインデッド」も、どの映画も彼の思いや情熱が画面からひしひしと伝わってくるんですよね。だから見ている人も、映画の世界に入り込みやすいとおもうんですよね。
 彼はニュージーランドで生まれ、小さいときから映画好きで8ミリカメラを持って、映画を撮っていた映画少年だったそうです。特にキング・コングがお気に入りで、自分でも模型を作り怪獣映画を撮っていたそうです。そして、友達と自主制作のホラー映画やF映画を作り、楽しんでいたようです。カメラの機材から小道具、特殊メイク、ミニチュア、撮影、編集と自分で何もかもこなしていたそうです。(その経験があるからこそ、大作映画を作るときでも細かいところまでスタッフに指示を出すことができ、自分のイメージする映画を作ることができたようです。)そして自主制作で撮った「バッドテイスト」というSF映画を劇場公開するとヒットして、本格的に映画監督の道に入っていったそうです。彼は小さいときから映画好きで、いま自分が撮りたいと思った映画を楽しんで作っているからこそ、見ている側も楽しいんでしょうね。

彼は今一番注目のヒットフィルムメーカーだと思います。

私のお奨めピーター・ジャクソン作品BEST5

バッド・テイスト

5位 バッドテイスト:彼の最初の作品。チープながらもキラリと光るセンスとグロさ。この映画が彼の出発点です。話しは地球人を食料として使おうとする宇宙人を秘密工作員がやっつけるというものです。何年もかけて自主制作で作った映画で、映像的には安ぽっさが漂うのですが、見せ方がとてもうまいので、最後まで楽しく見られます。カメラワークや編集、特殊効果など自主制作とは思えません。PJの演出のうまさが感じられる一品です。ただし、グロイのがダメな人は全く受け付けないと思います。全編悪趣味な映像のオンパレードです。

乙女の祈り4位 乙女の祈り:実話を元にした映画。感受性の強い思春期の女性2人が自分たちだけの想像の世界にのめり込み、自分たちの世界を壊そうとする母親を殺していまう。何とも後味の悪い映画でありますが、主人公たちが殺人を犯すまでの心理的過程をとても丁寧に捉えています。また2人が作り上げていく想像の世界をファンタジックに描く手腕はさすがPJ。

ブレインデッド

1位 ブレインデッド:これを超えるスプラッターはもうでないでしょう。マザコンの男がゾンビ化した母を守ろうとするが、どんどん裏目に出て周囲の人がゾンビ化していき、すざましいクライマックスを迎える。ラスト30分は笑うしかないくらいすごいです。とてもすごいスプラッターシーンの連続ですが、見終わった後はとても爽やかな気分になれる。そんな映画ってあまりないと思います。グロい映像も大丈夫という人は是非見てください。

king_kong位 キング・コング:彼の長年の思いが詰まった力作。この映画を見れば他の怪獣映画はもういらないでしょう。それくらいすごい怪獣映画です。監督の長年の思いと愛がつまった傑作です。3時間という超大作ですが、全編見所満載で、息つく暇がありません。とくにスカル島でのキング・コング対V-REXの死闘は凄いです。このシーンを見るだけ、1800円払う価値あります。

1位ロード・オブ・ザ・リング3部作:映画史に残るファンタジー大作。ストーリー・映像・音楽・役者、全て最高!あの長大な原作をよくここまでまとめあげたものです。あの世界観を映像で蘇らせただけで満点です。これから見る方は劇場未公開シーンを加えたぜひスペシャルエクステンデッド・エディションシリーズを見てください!

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