この映画を見て!「ポンヌフの恋人」
第17回「ポンヌフの恋人」
見所:ロマンティックで痛々しく、そして美しい。純度100パーセントのラブストーリー!
ここ最近、純愛映画が流行しています。しかし、この映画ほど恋愛が持つエゴイズムの痛々しさ、哀しみを描いた作品はなかなかありません。私がこの映画を始めて見たのは高校の時でしたが、画面からほとばしる情熱に釘付けになったものです。それと同時に恋愛とエゴイズムの関係の生々しい描写にいろいろと考えさせらた作品でもありました。
ストーリー:「パリで最も古く美しい橋、ポンヌフ。そこの橋をねぐらにして、火を噴く大道芸人として生計を立てる天涯孤独の青年アレックス。失恋の痛手と失明の危機にさらされ、人生に絶望して、街をさまようミシェル。彼らは橋で出会い、恋に落ちる。孤独と絶望の底で出会った二人は激しい恋に身を焦がす。しかし、目の治療法が見つかり、ミシェルは突然姿を消す。絶望に陥るアレックス。ミシェルも目が治ったにも関わらず、心は虚ろなままだった。そんな二人は雪積もるポンヌフの橋の上で再会する」
この映画、全体を通して重く暗い場面が多いのですが、それが主人公たちの鬱屈した精神を見事に表現しています。またそんな場面の中、はっとさせる印象的な場面がとても多いです。自分をふった恋人を銃で撃ち殺すミシェル、花火が上がるで橋の上で踊り狂う二人、海辺でのデート、地下鉄通路でミシェルを探すために両親が貼ったポスターを燃やすアレックス、そしてラスト雪が降り積もる中で再会する二人の姿。どのシーンも主人公たちの感情がほとばしり、見ている側にビンビン伝わってきます。音楽は全編を通してあまり流れてませんが、上手く既成曲を取り入れインパクトを残しています。特に花火のシーンでの曲の使い方は最高です。
役者の演技も上手く、ドニ・ラヴァンは決してかっこいいという訳ではないのですが、インパクトがあります。(監督曰くドニ・ラヴァンは彼の分身だそうです)またジュリエット・ビノシュは体当たりの演技をしてます。この映画で見せるさまざまな彼女の表情はとても素敵です。
北野武が「Dolls」という映画を撮った時に、「恋愛と暴力は似ている」という趣旨の発言をしておりますが、この映画をみるとその通りだなと思ってしまいます。恋愛ってある意味、エゴイズムとエゴイズムのぶつかり合いという面はありますよね。それがかみ合えば幸せであり、かみ合わなければ悲惨ですよね。この映画では恋愛におけるエゴイズムの問題が深く追求されています。孤独な二人がお互いの孤独を埋め合わせるために、共に過ごす場面は痛々しく、胸に迫るものがあります。恋愛とは相手のことを思いながらも、自己の欲求を相手との付き合いの中で満たすということが本質にあるということを、この映画は鋭く描いています。
ちなみにこの映画、フランス映画でもかなり高額の予算をかけて、ポンヌフ橋を再現したセットを作り撮影をされており、完成までに何年もかかっています。制作していた会社が倒産したり、プロデューサーが交代したりと、制作はとても困難を極めたようです。DVDのメイキングにそこら辺の経緯は詳しく描かれています。興味のある方は是非見てください。ある意味、本編より面白いです。監督の強い思いに支えられて完成した力作の映画です。是非見てみてください。 映画のラストは全編重苦しいですが、重苦しさを吹き飛ばす、希望に満ちたシーンで終わります。ラスト生まれ変わった彼らを祝福してあげてください!
製作年度 1991年
製作国・地域 フランス
上映時間 125分
監督 レオス・カラックス
製作総指揮 エルヴェ・トリュフォー 、アルベール・プレヴォスト
脚本 レオス・カラックス
音楽 ベンジャミン・ブリテン
出演 ドニ・ラヴァン 、ジュリエット・ビノシュ 、クラウス=ミヒャエル・グリューバー 、ダニエル・ビュアン 、マリオン・スタレンス
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