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この映画を見て!「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

第7回!「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

見所:主演女優ビョークの演技と魂を揺さぶる歌声、そして賛否両論分かれる結末

dancer_in_dark

この映画を私が最初に見たのは、ちょうど5年前のお正月でした。毎年1月1日の映画の日に家族で映画を見に行っており、この映画をミュージカル映画だという情報しか知らなかった我が家族はこの年の正月にこの映画を見ることを選びました。私の家族はミュージカル映画が好きだったので、その延長でこの映画を見にいったのですが、見終わった後、すぐに正月気分が飛び、家族みんな考えこみながら帰ったのを覚えています。

 

 この映画はハリウッドのミュージカル映画好きの人が行くと、期待を裏切られますし、一般的なハリウッド娯楽映画好きの人が見ると重くとても後味が悪い映画です。また気分の落ち込んでいるときに見るのは避けたほうがいい映画です。

ここまでの感想を読むと見るのを止めたくなると思うのですが、私は一度はぜひ見て損のない映画だと思っています。

この映画の最大の見所は主人公を演じるアイスランド出身の歌手、ビョークの演技と歌声にあると思います。ストーリーは好き嫌い分かれると思いますが、映画の中のミュージカルナンバーは曲・詩とも美しく、ビョークの歌声は見る人の魂を揺さぶる感動を与えてくれます。とくにラストのビョークの歌う姿・声はもはや歌姫といった感じで鳥肌ものです!またミュージカルシーンの美しさやユニークなアングルでの撮り方は一見の価値ありです。

ストーリ:「アメリカに一人息子と共に移民として渡ってきた主人公セルマ。主人公と息子は共にいつか失明する進行性の目の疾患を持っており、主人公は息子の目を助けようと下町の工場で働き、手術のお金を貯めている。そんな主人公の唯一の楽しみはアメリカのミュージカル。厳しい現実の中頭の中では自分もミュージカルの主人公となることで、自分を支えている。そんなある日、息子の手術代を近所の友人に盗まれてしまうことから悲劇がが始まる。」

この映画はハリウッドが作ってきた今までのミュージカル映画とまったく違っています。まずミュージカルシーンはすべて主人公の女性のこうあって欲しいと願う心象風景として描かれており、現実のシーンとはっきりと分かれています。現実のシーンは手持ちカメラ1台で主人公の姿をドキュメンタリータッチで生々しく捉え、ミュージカルシーンはデジタルビデオを100台以上使い、巧みな編集で幻想的かつ躍動感のあるシーンになっています。この二つのシーンの巧みな使い分けが主人公の置かれている現実と理想の差を鮮烈に表現してます。

ストーリーは前半、淡々と主人公の状況説明するシーンが続くので、眠くなるかもしれません。しかし中盤から主人公に訪れる悲劇を描くあたりから、目の離せない展開になります。主人公のとる行動一つ一つが一般の人から見ると不可解で、自分から不幸を招いているような印象をもつと思います。もっとこうしたら何とかなるのにと思う所が何箇所もあります。主人公のあまりの不器用さ、頑固さは、見る人をいらいらさせるかもしれません。そんな主人公のとる行動をどう受け取るかで、この映画の評価は分かれてくると思います。

また登場人物を通して、人間の強さ・美しさ・やさしさと弱さ・醜さ・愚かさの両面がこれでもかというほど描かれています。それは見る人を感動もさせ、とても不快にもさせます。監督は人間の両面を執拗に描く中で、生きていくことの意味を、見る人に問題提起しています。

さらに、この映画はアメリカのお家芸のミュージカルを逆手にとり、痛烈なアメリカ批判をしている映画でもあります。アメリカの民主主義・自由・ヒューマニズムの底の浅さを痛烈に批判しています。特に後半の裁判のシーンは必見です。

この映画のラストはある意味、とても重いものです。救いようの無いようなラストに見えるかもしれませんが、私は主人公にとって、残酷な舞台の上ではありますが、最後に現実の世界でみんなの前で歌を披露できたという意味では、救いようがあったのではと思っています。

この映画は見る人に感動か不快感のどちらかの印象を与えます。きっと監督は確信犯的に見る人がどちらの印象も取れるように作ってあります。みなさんはこの映画にどういう印象をもたれるでしょうか?ぜひ機会があればご覧下さい。

製作年度 2000年
製作国・地域 デンマーク
上映時間 140分
監督 ラース・フォン・トリアー 
製作総指揮 ペーター・オールベック・イェンセン 
脚本 ラース・フォン・トリアー 
音楽 ビョーク 
出演 ビョーク 、カトリーヌ・ドヌーヴ 、デヴィッド・モース 、ピーター・ストーメア 、ジャン=マルク・バール 

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コメント

こんばんは、TB&コメントありがとうございます。

この映画は、トリアー監督の作品だけあって、ベルイマン映画と同様、神や信仰など難しい問題を扱っていると思います。見ていて、しんどいですよね。ただ、救いは貨物列車の上でミュージカル・シーンを展開する場面でした。あのシーンには感激してしまいました。

それでは、また遊びに来ますんで。

投稿: David Gilmour | 2006年6月29日 (木) 01時15分

こんばんは!TBサンクスです。
OL映画でいやし生活のごまと申します。

いや~元旦から家族をこれで見るとは・・・w。
私はこの映画を見て1週間は立ち直れませんでしたぁ。

見ている最中ずっと不快な気持ちでしたが、でもそれは人間の見たくない部分だからだと思いました。その立場になること自体がつらいんだと思います。

でもすごく深い映画だし、演出も抜群な秀作だと思いましたねぇ。

また今後ともよろしくです♪

投稿: goma | 2005年12月31日 (土) 20時26分

TBありがとうございます。

>この映画は見る人に感動か不快感のどちらかの
>印象を与えます。きっと監督は確信犯的に見る
>人がどちらの印象も取れるように作ってあります。

これには賛成です。ただ、僕はこの映画が公開されたときには、不快になる人の気持ちが全く理解できませんでした。
それぐらいのめり込んでしまったんでしょう。
今は少しだけ理解できるようになりましたが。
映画にせよ、音楽にせよ、それ以外のものにせよ、表現行為に意識的になったことのある人には(必ずしも作り手でなくても)、この映画を見て何がしか感じるところが絶対あるはずだということだけは、今でも確信しています。

あと、こちらのエントリはネタバレを含みますので、未見の方は映画をご覧になってからお読みください(念のため)。

投稿: 23mm | 2005年12月31日 (土) 09時17分

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