この映画を見て!「ハウルの動く城」
第8回「ハウルの動く城」
見所:恋をすると人は変われるということを教えてくれる主人公たち
昨年大ヒットを飛ばし、つい先日DVD発売となった「ハウルの動く城」私も劇場で2回、そしてDVDで何回も見直していますが、この映画は見れば見るほど面白くなる映画です。映画館で見たときは宮崎駿のアニメの中では面白くない映画だなと思って見ていました。私の中で期待している宮崎駿の映画とハウルは何かが違う映画でした。そして私の周囲の男性と女性にこの映画の評価を聞くと女性に結構肯定的で好きな人が多く、それがなぜなのか疑問に思っていました。私の中で宮崎駿にもとめている映画って天空の城ラピュタのような活劇・となりのトトロのようなファンタジー・もののけ姫のメッセージ性などだったので、ハウルもその延長で見ていました。しかしこの映画をその延長でみると何か物足りないんですよね。なぜかと考えていくと、この映画って基本的に恋愛映画なんですね。戦争や魔法など出てきますが、それらは別に今回のメインテーマでなく、サブみたいなものなんですよね。そこが理解できると、この映画はロマンティックで面白い恋愛映画です。
今までの宮崎駿映画でも恋愛は出てきましたが、正面きってメインテーマで描かれることってなかったんですよね。だから昔から宮崎駿の映画が好きな人は物足りなかったと思います。この映画では戦争や魔法での対決など、今までの宮崎駿の映画ならもっとメインに出てきそうなことが、さらっとしか描かれていません。そのため、この映画が説明不足の映画だという意見が出てくると思うのですが、宮崎駿は戦争や魔法・城を細かく描くつもりは最初からないんでしょうね。
この映画のテーマはソフィーとハウルの恋愛と恋することによって変わる人間の姿を描くことです。自分に自信のない女性が、老婆になることで開き直り、恋に落ち、変わっていく。その主人公の姿だけを追ってこの映画を見れば、素敵な恋愛映画です。ハウルの美男でナルシストだけど弱虫でやさしい男性というは設定は少女漫画にでてくる男性の設定そのものです。だからこそ少女漫画がすきだった世代、ロマンティックな恋にあこがれる女性にはハウルは魅力的に見え、この映画のソフィーに共感もするのでしょう。この映画はソフィーの目線だけに絞って話が進んでいます。ソフィーという女性の恋による変化・ハウルの美しくナルシストな男性の魅力を楽しむ映画です。そういう視点でみると楽しく感動的な映画です。
ではなぜこのような恋愛映画の背景によくわからない戦争をあえて持ってきたのでしょうか。宮崎駿はこの映画を「戦火のメロドラマ」と言っているように戦争を意識しています。以前雑誌でも、ハウルは911同時多発テロ後を意識した作品にもしたいと言ってもいました。宮崎駿にとって戦争は今回どうしても入れたかった要素のようです。
しかしこの映画での戦争の描き方は抽象的で、何がどうなのかよく分かりません。でも今行われている戦争の多くも、個人には抽象的で、非現実的でよく分かりませんよね。そういう意味ではこういう描き方もありかなと思います。何千年と人間の世界で行われてきた戦争。理由が何であれ、多くの個人にとっては不条理な世界ですよね。戦争になると個人よりも全体が優先されてしまいます。この映画でもハウルが兵器として国の役に立つことを強制されます。でも戦争って個人にとっては実はほとんど無意味なことなんですよね。ハウルも行きたくないけど、言われるから兵器として闘いには出て行く。そんな戦争の中で戦争の目的を個人的な恋愛の中に見出し、愛する人のために戦いに参加してしまい、結局愛する相手を苦しめてしまうという悲劇、虚しさ。この映画の後半、ハウルが戦おうとするのをなぜソフィーが止めようとするのか、そこには自分の大切な人を守りたいという思いがもちろんあるのですが、その裏には戦争の虚しさを食い止めようとするソフィーの思いが感じられるんですよね。この映画、恋愛を通したある意味、反戦映画でもあると思います。
この映画、賛否両論あると思いますが、映像・音楽ともに美しく、見所の多い映画です。ロマンティックな雰囲気を味わいたいときは最高にいい映画です。ぜひ皆さんご覧ください!
公式サイト:http://www.howl-movie.com/
製作年度 2004年
製作国・地域 日本
上映時間 119分
監督 宮崎駿
原作 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
脚本 宮崎駿
音楽 久石譲
声の出演 倍賞千恵子 、木村拓哉 、美輪明宏 、我修院達也 、神木隆之介
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この記事へのコメントは終了しました。
コメント
トラバありがとうございます!!
私もほんとにそう思います。
宮崎作品は今まで恋愛をメインに描いたことってないんですよね。
だから初めてこの作品を見たときは
ビックリしたし、でもすごく新鮮で
素直に感動しました。
この作品はほんとに賛否両論ですね。
つまらない人にはつまらない。
でも見方を変えれば本当にすばらしい作品だと
思います。
投稿: ゆみっち | 2006年1月 1日 (日) 07時47分
トラックバックありがとうございます。
素敵なブログでうらやましいです。
昨日作った即席のブログで使い方がまだわかりませんが
また見に来てください。
投稿: とも | 2005年12月31日 (土) 22時54分